すべては野茂から始まった

先日、アメリカのメジャーリーグに行っていたプロ野球選手の松坂大輔氏が日本のプロ野球に戻ってくるというニュースが取り上げられていた。僕がホテルに勤務していた頃、ドラフトで西武に入団した際に入団会見を僕の勤務先のホテルで行ったので印象に残っている。でも「メジャーリーグ」といえば野茂英雄投手の名前を忘れることはできない。

プロ野球には興味もなくテレビ中継も見ない僕だが、近鉄(?)にいた野茂英雄がアメリカのメジャーリーグに移籍したときのことはなぜか覚えている。在籍していた日本の球団から冷遇され、「メジャーリーグに行く」と言ったら日本のマスコミから「通用するわけがない」とバカにされた。それでも野茂はアメリカに渡った。30数年ぶりの日本人メジャーリーガーだったそうである。

アメリカでデビューした途端にバッタバッタと三振を取りまくりアメリカのファンには「ミスターK」と呼ばれて大層な人気を得た。アメリカのスタジアムでは野茂が登板すると「バナナ・ボート」の替え歌で「ヘ・デ~オ!ヘデェェ・オ!ノモが投げればダイジョーブ!」と歌われたくらいだ。するとそれまではあからさまにバカにしていた日本のマスコミも手のひらを返したようにノモのニュースを取り上げるようになった。その後日本のプロ野球からはイチロー、松井秀喜、ダルビッシュ、上原、田中将大、岩隈、新庄など多くに日本人選手が渡米するようになる。もちろん活躍した人もいるししなかった人もいる。それでも全ては野茂英雄から始まったのだ。

「ファースト・ペンギン」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「First Penguin」~最初のペンギンという意味だ。ペンギンが餌を捕るために氷の上を歩いて氷山の絶壁の縁まで行く。しかしその集団は荒れ狂う波に怖気づいてかモジモジするばかり。誰も飛び込もうとはしない。やがて一匹のペンギンが意を決して荒海に飛び込む。するとそれを見た他のペンギンも後に続いて続々と海に入っていく様を表した言葉だ。同じ飛び込むにしても最初に飛び込むには後に続いて飛び込む者の何倍もの勇気が必要なのだという比喩である。

野茂は幸いメジャーリーグで活躍することができた。アメリカで話題になったから日本のマスコミを振り向かせることができた。しかし、あのとき野茂が何の活躍もできずに挫折して「そーら見たことか!」という罵声を浴びていたら、野茂の後に続こうとした日本人はいただろうか?
メジャーリーグの話題を聞くたびに僕はいつもあのトルネード投法を引っさげてアメリカに渡った彼のことを思い出す。