夏になると毎年”水の事故”がニュースを騒します。そもそも遊泳禁止の場所や人気のない川で泳いでいれば目立たないのも当たり前でこれはどう考えても自己責任でしょう。まず第一に、簡単に溺れてしまうような人は水をナメています。人は気管にほんの一滴の水でも入れば簡単に溺れて命を落とすことがあります。

最近話題になっている河川氾濫などによる浸水で流されて命を落とす人もいます。車に乗っていても30センチも浸水している場所では車は浮き始めます。人は「車の中なら安全」と思っている人は多いですが、ハンドルもブレーキもアクセルも効かなくなった車はどこに行くか判りません。ましてや水の流れがあれば、エンジンがかかっていたとしても自分の意思とは関係なく漂流してしまいます。先日の北海道・知床での観光船沈没事故では原因はわかっていませんが、エンジンが止まって舵の効かない船にはなす術もありません。船と車の違いはあっても浮かんでしまった自動車は船と同等以下です。だって車は沈んでしまうのですから。

ニュースでは、浸水した道路の膝ほどもある深さの川に歩いて入る人の映像を見かけます。水の抵抗というものは本当に侮れません。くるぶしほどの深さでも強烈な流れに逆らっては歩くこともできません。海水浴の砂浜で波打ち際に立ってみれば波が引いていく時の力は壮絶です。これが仮に川の流れや津波だったら逆らうすべもありません。なのに水の力を侮っている人は遊び半分で不用意に足を踏み入れます。

波打ち際で水や波の勢いに流されてちょっとでも背のたたないところに流されてしまったらもはや遊びでは済まされません。真面目にしっかり泳いで水を飲まないようにしなければあっという間に溺れます。しかし学校では淡水のプールでしか水泳を教えません。プールには波も流れもなく、その上、日本の学校のプールは”危険だから”という理由で足のつかない深さにはなっていません。でも自然の海や川は1mでも沖に出ればすぐに足がつかなくなるのです。

そして「人は一瞬でも溺れたら息ができなくなる」「息ができなくなればすぐに死ぬ」のに、なぜかそのことがあまりよくわかっていない人が多いのです。あなたは(プールで)溺れたことがありますか?ボクは子供の頃、2回ほど溺れたことがあります。幸い2回とも大人の目に前ですぐに気づいてもらえ、命を落とすことはありませんでした。でも溺れたその時にはもはや「助けてー!」などと声を出して手足をバタつかせることなどできませんでした。自分では何も出来ずに沈んでいくだけです。

酒を飲んで海や川に入るなど愚の骨頂です。気が大きくなって深く考えることもできません。酔っ払っていては満足に泳ぐことなどできないのです。あなたにまだ溺れた経験がないのならなおさら、”水は怖い”ということをよく考えて欲しいのです。人は水の中では生きられない生き物です。溺れてほんの1滴でも肺に水が入ってしまったらまず助からないと思った方がいいと思ってください。それに気づいて「しまった!」と思った時にはすでに手遅れなのです。2度と這い上がることのできない死への坂道を転がり落ちているのです。

テレビなどでは、「溺れている人を見かけたら…」などと言っていますが、実際のところ溺れている人を見つけることなどまずできません。たとえ自分のすぐ近くの50センチのところに溺れている人がいたとしても、その瞬間を見ていなければその人が溺れていることにすら気づかないでしょう。溺れた人は水面で手を振ることも声を出すこともなく一瞬で静かに水に沈んでいきます。溺れるとき人はただ静かに沈んでいくのです。そして一旦水面下に沈んだ人はもう声を出すことなどできないのです。

水に入ればもはや自分一人だけです。誰にも助けを求めることなどできません。水の怖さに気づいていない人は溺れてからそれに気づくのです。すでに後の祭り、ジ・エンドなのです。

あなたも水を飲もうとしてうっかり気道に水が入りかけてひどくむせてしまった経験はないでしょうか。あれは溺れた時の疑似体験です。それが息のできない水の中で起きれば万事休すです。翌日の地方新聞の社会面にはあなたの死亡記事が載ることになるでしょう。そういうことに思いを至すことが、想像力を働かせて慎重になるということなのです。