テレビのグルメ番組でラム肉(子羊の肉)を食べた人が「思ったほどクセがないよね」などと言っている。ボクは今までラム肉に”クセ”を感じたことはない。マトン(成羊の肉:ラム肉に比べて臭いが強いといわれている)でもあまり違和感はないどころか、ラム肉はちょっとさっぱりしすぎている気もしている。

だからといってカマンベールやリコッタチーズが物足りないとは思わない。要は使い分けだ。バランスが大切だ。でも風味が弱いものだけだとやっぱり飽きてくる。

「クセ」は好みで好き嫌いが分かれる。”クセがない”ということは”特徴がない”ことと似ている。”個性”が珍重される昨今の社会で個性がないことが褒め称えられるのは料理や日本酒だけだ。
ボクはパクチーやバジル、ルッコラなどのいわゆるハーブが好きだ。ゴルゴンゾーラやロックフォールなどのブルーチーズも大好きだ。以前の職場近くにあった刀削麺屋では注文すると中国人の従業員に必ず「パクチーダイジョーブですか」とカタコトの日本語で尋ねられたものだ。香草(シャンツァイ)と言われるくらいだからそれくらい好き嫌いのある食材なのだろう。

でも同じようにクセがある食べ物でも琵琶湖の鮒鮨は好みではない。一度食べたがどうも好きになれない。クセはモノによって様々だから一概に語れるものではない。それは人の性格でも同じことがいえる。人もクセのある人は敬遠されることがある。「あの人はクセが強いからねぇ」などと言われて敬遠されることもあるが、一方で魅力的な人は概してクセが強い。

万人受けすることが必ずしもいいことだとはボクは思わない。万人から好かれるということは万人が熱狂的なファンになることとは違う。人が熱狂的なファンになるには強い個性が必要だと思う。逆に言えばその強い個性=クセの魅力に惹かれるから熱狂できるのだと思っている。

ボクも飲食店や売られている食べ物の口コミは見ることがある。しかしその多くはボクが実際に食べた印象とは違っている。口コミで「ちょっとクセがあって気になる」と書かれたものは大抵の場合、ボクの好みのストライクゾーンだ。ファンになってその後もことあるごとに買って食べているものが多い。しかしそういうモノに限って絶版いや販売終了してしまうことが多い。万人受けしないとお金儲けにはなりにくいらしい。

逆に「誰もが大好きな味」はごく普通の平凡な味だ。もっとも”平凡”だからこそ大人から子供まで誰にでも好かれるのだろう。そういうものは世の中にたくさんあるのだが、そういったものを口にしても最初は「ふーん」と思うがすぐに飽きてしまう。だからボクがファンになることはあまりない。ボクは人も食べ物もクセが強いものが好きなのかもしれない。