ちゃん・リン・シャンって何ですか?

■ヤクシマル
中学生の頃、野球部の連中は石野真子に夢中だった。高校生になった頃、薬師丸ひろ子が角川映画とともにやって来た。ヤクシマルという名前の珍しさと超絶な可愛さから恐ろしいほどの人気アイドルになった。
それから10年ほど経った頃、シャンプーのCMで彼女を見かけるようになる。「ちゃん・リン・シャン」といえば当時の若者には絶対的な知名度のあるシャンプーだった。

本当の製品名は知らなくてもチャンリンシャンといえばシャンプーだった。「ちゃんリンスしてくれるシャンプー」。僕が子供の頃にはシャンプーは一般的ではなかったように思う(間違ってたらごめんなさい)。僕は二十歳を過ぎるまで石鹸で頭を洗っていた。頓着がなかったのでリンスなんてすることもなかった。というよりそんなに手間のかかることは面倒くさかったから石鹸を洗い流したらタオルで拭いてそのまま乾かしていたが不便を感じることはなかった。

■初めてシャンプーを買った頃
実家を出てひとり暮らしをするようになっても家にシャンプーはなかった。もちろん温泉など行ったときには現地に置いてあるシャンプーを使うこともあったが、取り立てて欲しいとも思わなかった。そこへ現れたのが「薬師丸」と「ちゃん・リン・シャン」だった。シャンプーは欲しくなかったけれど薬師丸ひろ子は好きだったので早速薬局(当時はマツキヨなどはなかった)に行って買ってきた。期待しながら家で使ってみたけれどシャンプーの効果もリンスの効果も全然わからなかったのは我ながらちょっと情けなかった。効果は感じられなかったが相変わらず彼女が宣伝していたのでしばらくの間は買い続けていたように思う。

■分けることと合わせること
同じものを用途別に分けて売って売上を増やす方法というのを以前紹介した。同じ中身の靴クリームのパッケージだけを変えて「クリーナー用」「トリートメント用」「つや出し用」の3つに分けたら売上が5倍になったという話をした。「ちゃん・リン・シャン」はその逆の発想である。別々に作業するのは面倒くさいから”そもそもやらなかった”消費者を取り込もうという戦略だ。人は「〇〇専用」が大好きだが「これ1本で全部OK」「〇〇するだけ」も大好きなのである。シャンプーで汚れを落として一度お湯で洗い流す。そして再びリンスを馴染ませてしばらく置いてから洗い流す。僕にはそんな面倒くさいことはできない。そんなことをしたって何も変わらなかったからだ。そもそもリンスをつけて洗い場にボーっと座っていたら寒いではないか。それなら湯船に浸かってのんびりとしている方がいい。体を洗ったり頭を洗うのは単なる作業でしかない。(意見には個人差があります)そんな人に受け入れられやすいのは「これ1つでOK」なのだ。恐らく男性は女性よりもダラシなくて面倒くさがりが多い。両方を一度で済ませるのなら、男は使いたいと思う。だから「ちゃん・リン・シャン」はそれまでのシャンプーに比べて男性客の需要が多かったのだろう。

■朝シャン
そういえばこの頃から「朝シャン」というのが始まったような気がする。朝、起きてからシャンプーしようっていうのが流行り始め、その後「家の洗面所は朝シャンができないようでは使い物にならない」という勢いだったのを覚えている。それは賃貸アパートにまで広がって不動産屋のアパート広告に「朝シャン可」なんて表示まであった。今でいう「ペット可」みたいなものだろうか。朝シャンは特に時間のない登校・出勤前のことだからとりわけ簡単な方が好まれる。男性に比べて比較的髪の長い女性にも支持されたことは容易に想像できる。詳しいことは分からないが、このあたりから朝シャンがブームになったのかもしれない。

僕は朝シャンをしないので分からないが、今でも朝髪を洗う人は一定数いるのだろうか。発売から30年以上が過ぎた「ちゃん・リン・シャン」が長寿商品として今でも販売されているのは非常に興味深い。