先日、俳優の田中邦衛さんが亡くなった。磯子の横浜プリンスホテルの近くに住んでいたので、時折家族で食事にみえることもあった。さすがに「青大将」の頃の映画は観たことがなかったが、後に若大将シリーズがテレビで放送されたときには目にすることもあった。

しかしボクにとって田中邦衛さんといえば「五郎さん」だ。ボクが高校生だった1981年に半年ほどフジテレビで放送された「北の国から」という連続ドラマの主人公だった。東京で奥さんに逃げられて都会に失望した五郎が、幼い二人の子供、順と螢を連れて故郷の北海道・富良野に移り住むところから話は始まる。

あまりにも長い物語なのでストーリーの詳細に触れることはしないが、当時としてはとても綺麗な映像(ハイビジョンではない)に北海道の自然が大写しされて、これを見て北海道ファンになった人も多いのではないだろうか。

その純を演じたのが「Dr.コトー」こと俳優の吉岡秀隆さんで、螢が中嶋朋子さんだ。最初の連ドラの時にはまだ幼い小学生だったが、その後、21年間続くことになるドラマスペシャルの間にすっかり大人になって、誰もが親戚の子供の成長を見るような錯覚に陥った。それもそのはず、ドラマスペシャル最終回までの21年間、ひとつの役はずっと同じ俳優が演じてきた。

五郎の幼なじみで親友の中畑木材の社長役だった地井武男さんや五郎の従兄弟だった大滝秀治さんは10年ほど前に他界された。純の親友の正吉(中澤佳仁さん)の祖父役だった大友柳太朗さんも連ドラの終了後、鬼籍に入った。残りの俳優さんたちもそれぞれに歳を重ねて、人の一生を垣間見るような気がしている。

草太兄ちゃんだった岩城滉一さんがジャワカレーのコマーシャルに夫婦で出演していたのももう30年近く前のことで、当時の若夫婦も今では老夫婦になった。このように1本のドラマを子供の成長記録として見ることもできるが、中年から老人までの大人が死んでいくまでを映したものとしての価値もある。
今となってはもう40年も前のテレビドラマであり若い世代にはあまり知られていないと思われるが、今でも”温泉”といえば「ドリフターズ」の♪ババンババンバンバン♪が流れるように、”北海道”といえばさだまさしの「北の国からのテーマ」が流れるほど、大衆に染み込んだドラマだった。もはやテレビドラマが大衆から見放されてしまった今、これからこのようなドラマが出てくることはないのだろうか。