今年に入ってから両親の介護や相続などの手続きで、市役所をはじめとして介護施設などで手続きをすることが多い。もちろん当事者が手続きに行かれれば問題ないのだが、足腰が弱ったりケガなどで起き上がれなかったりすると窓口まで連れて行くこともままならない。ましてや新型コロナの感染拡大で、あちらこちら連れ回すことも気が引ける。
最近では高齢ドライバーの免許返納が増えている。もちろん起き上がれない人間が車に乗って運転できるわけもないので免許証はただの身分証明書に過ぎない。それに2〜3年に一度更新しなければならない身分証明書など、身動きがままならない高齢者にとっては使いにくいだけである。
それでもどこに行っても写真付きの身分証明書の提示を求められることも多い。もちろん本人が窓口に行かれるわけではないので手続きには「委任状」が必須なのだが、不動産の登記変更などになると身分証明書の提示を求められる。しかも”写真付き”でない場合は年金手帳や保険証など2種類以上の証明書が必要になったりする。
そして間が悪いことに、うちの両親の場合はマイナンバーカードを取得しているのかいないのか本人が忘れている上に、現物も見つからないので本人の写真付きの証明書がないのである。どんな場面で「身分証明書を見せてください」と言われるかわからないので、どこに行くにも保険証や年金手帳、印鑑、預金通帳などの一式を持ち歩かざるを得ない。
委任状を持って代理で手続きをするとなれば当然自分の身分証明書や印鑑も必要になる。こうなるとどこに行くにも手続き書類の他に身分証明書一式を持って行くことになる。しかも住民票の移動ともなれば現地の市役所まで行って保険証の変更もやらなければならないので、時間ばかりかかってなかなか終わらない。
政府は「”デジタル化”を実現する!」と息巻いているが、こんな手続きを一度でも経験すれば日本の行政がどれほどダメなのかわかるのではないだろうか。おそらくあと20年は終わらないのではないかと思っている。必要ないハンコ一つ省略できないお役人に何を言っても無駄なのかもしれないと、ほとんど諦めの境地である。