エモいって、なに?

最近の若い子たちがしきりに「エモい」を連発する。キモいっていうのは随分前から言われていたので(性格や容姿が)気持ちが悪い(不気味)ということは知っている。エモいも一文字しか違わなので、ずっと何かネガティブな意味なんだろうと思っていた。

しかし彼ら彼女らの話を聞いているとみんなが意気揚々と「エモい」を連発している。「キモい」のときは眉間にシワを寄せたり苦笑いしながらだったのでずいぶんと様子が違っている。このテの言葉は辞書を引いても載っていないのでネットで調べてみた。

『エモい』
なんとも言い表せない素敵な気持ちになったときに使う、主に若者の間で浸透している俗語(スラング)です。感情が揺さぶられたとき、予期せず感動したとき、とりわけ心地の良い懐かしさや良質なセンチメンタルに襲われたときに使うようです。

なんじゃそれは、ちょっと言ってる意味がわからない。わからないがノスタルジックな気分を感じさせるものに使うのだろう。しかし彼ら彼女らにとってのノスタルジックとはなにを指すのだろう。ノスタルジックは「郷愁」とでも訳すのだろうか。郷愁とは故郷を離れた人が故郷を想って懐かしむことだ。

つまり自分が知っている過去の良かった風景や出来事を思い出すことである。だからそもそも自分が経験したことのないものに郷愁を感じることはない。昭和30年代の末期に生まれたボクにとって都電(路面電車)には懐かしさを感じるがSL(蒸気機関車)には懐かしさを感じない。都電には何度か乗ったことがあるがSLには記憶にある限り乗ったことがないからだ。

しかしエモいは見るからに20代の平成生まれ平成育ちの若者が昭和の頃の電話ボックスやテレビ、洗濯機などを見たときにも使っている。彼らが生まれてから今までの暮らしの中でそんなものを使っていたとは思えないのだが「エモい」んだそうだ。すると過去に体験したことがなくても単に古いものにはなんでも”エモさ”を感じるのだろうか。ボクにはちょっとわからない。

ボクらの子供の頃の”ちょっと前”は軍国主義であり太平洋戦争だった。もちろんボクはそれらを体験したこともないししたいとも思わない。それは”苦しい体験”だということを聞かされているからだろう。食糧難も知らないし警察予備隊も知らない。安保闘争はテレビのニュースでちょっとだけ記憶にある程度だが、考えてみればボクらより前の時代には”良かった”と懐かしがるものがほとんどなかったのかもしれない。

ボクらの世代は、日本から戦争などの苦しみがなくなって高度成長を遂げて平和を享受できる時代とともに生きてきたということだ。それでもボクら以前の時代を生きてきた人たちにも個人的には懐かしむことのできる”いい時代”だと思えた何かがあるのだろうと思う。しかしそのことを後の世代に伝えることなく年老いてしまった。

ボクは誰かが感じる郷愁を羨むつもりもないし、見たり聞いたりしたところで懐かしくも感じないし心も揺さぶられないと思う。それでも今の若い子たちが自分の知らない時代のものを見て”エモさ”を感じられるのはどうしてなんだろうと不思議に思っている。

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