アメリカのトランプ大統領が新型コロナに感染して発病し、入院したのだというニュースが流れてきた。今まで本人は「コロナなんて大したことない」とか「俺はマスクなんてしなくたって大丈夫だ」といった発言を多くしてきただけに、今どんな思いでいるのだろうかと興味がないと言えばウソになる。

巷では「自業自得だ」とか「自己責任でやったんだから」という声も聞かれるが、自分の行動がもたらした結果がアメリカ国民全体に及んだのだとしたら、自分”以外”の身にも結果が及んだのだから少なくとも自己責任や自業自得という言葉だけでは済まされない。

自己責任とは「自分の判断がもたらした結果に対して自分が負う責任」(広辞苑より)であり、自業自得とは「自分の悪い行いの報いを自分の身に受けること」(三省堂国語辞典より)だとされている。もちろん彼が起こした行動が自分自身の感染に繋がったという直接的な証拠はない。

しかしアメリカという大国のリーダーが行なった判断や行動は、アメリカ国内に限らず世界中に影響を及ぼすことは容易に想像できる。彼はこの3年以上にわたって温室効果ガスを抑制するための「パリ協定」からの離脱を始め、イスラエルのアメリカ大使館のエルサレム移転、イラン核合意の破棄、TTP協定からの離脱など多くの国際的な枠組みから離脱してきた。

その表向き理由は「アメリカファースト(アメリカ優先主義)」だったが果たしてそれが本当にすべてのアメリカ国民のために有利な判断だったのかといえばそれはわからない。3億2千万人のアメリカ人の中には白人も黒人もヒスパニックもアジア人も、キリスト教徒もイスラム教徒もユダヤ教徒もヒンズー教徒も仏教徒も無神論者もいるだろう。

それこそ人種のるつぼと言われるだけに彼ら一人一人の価値観は様々だ。しかし、たぶん「安心して穏やかに生きていきたい」と思う気持ちだけは多くの人に共通した願いなのではないだろうか。彼の政策ややってきたことを直接非難する権利は日本国民のボクにはない。しかしどこの国のリーダーであれ、その国民の共通した願いを尊重するのは最低の義務ではないかと思う。

得てして独裁者は自分の都合だけを優先する「自分ファースト」になりがちだ。自分のために他人を犠牲にする。トランプ大統領は白人労働者の生活をより良くしようとしても「アメリカファースト」の政策を打ち出した。しかし世界は彼が不動産の世界だけで考えていたよりもずっと複雑だった。

中国との貿易を制限したら多くのアメリカ企業が潰れてしまった。解雇された労働者の多くが路頭に迷った。。それでもまだ半分近くの人はトランプ支持だという。逆に半分のアメリカ人は途方に暮れているということだ。選挙は過半数の賛成があれば勝てる。しかし残りの半数近くの国民が切り捨てられてしまうことにも目を向けなければならない。

それはアメリカの話ではなく日本でも同じことだ。それを自己責任や自業自得という言葉でひとくくりに語ってしまうことに危うさを感じている。