もう何十年も前からビジネスへのコンピュータ導入は進んできた。ボクが30年以上前に最初に就職した会社でも受注や外注、工場の製造管理にはホストコンピュータが使われていた。今のように瞬時に画像が表示されたりネットワークに繋がってはいなかったが、事務処理を高速にこなす能力は人間の比ではない。

だんだんとカバーする業務を増やして効率化を進めるために経営陣は更なるシステム化を望んでおり、情報システム部門にいたボクのところにも毎日毎日、様々な要求が持ち込まれた。経営者を含めてほとんどの人はコンピュータが何なのかを知らなかったし、どんな業務に使えば便利になるのかもわかっていなかった。だから”コンピュータを使えば”すべてのことが改善されると思っていた。

コンピュータには得意な仕事と苦手な仕事があるのは、AIが取りざたされる今でも昔と変わらない。誰かに吹き込まれたIT化のメリットだけを聞き齧ってすぐに飛びついてくる人は多い。特に中途半端に歳をとった中高年にその傾向は顕著だ。偏った情報と中途半端な頭デッカチが理想像だけを追い求める。

メリットがあればデメリットがあるのはコンピュータに限ったことではない。薬を飲めば副作用があり手術をすればリスクを伴う。投資をすれば儲かるかもしれないが損をするかもしれない。都合のいいことばかりが起きないのは世の常だ。

人手でやっていた非効率的だと思われる業務をコンピュータにやらせようとするときにはあらかじめキチンと考えておかなければならないことがある。

・何の目的で
・どの範囲の業務を
・どのような方法で
・いつまでにやるのか
・その効果測定や検証の方法はどうするのか
・何をもって成功と位置づけるのか

ということだ。これらをしっかりと決めて計画を立ててからでなければ走り始めてはいけない。これをシステムの世界でも「要件定義」という。途中で要件がコロコロと変わってプロジェクトが瓦解してしまうのは事前の計画が杜撰だからだ。一番多い失敗は目的を見失ってしまうことである。業務を効率化して経費を減らすために始めたものが、いつの間にかシステム化することが目的になってしまい、「いくらかかってもいいからとにかく完成させろ」などと言い始める。

計画通りに都合よく完成するプロジェクトがないのは人生と同じだ。プロジェクトにハプニングはつきものである。想定外の事態が起きた時にどうやって傷口を浅く、よしんば成功に近づけられるように対応できるかはプロジェクトマネージャーと現場との信頼関係に頼るしかない。そのために最後は現場が納得できる計画を立てなければならない。筋が通らない計画は必ず破綻する。

テレビCMで「何かいい方法はないか?」と問いかける経営者に「システムを統合すればいいんです」と答える担当者。

「そうか、すべて君に任せよう!」

こうしてすべてはグズグズになっていく。そんな場面を見過ぎた。