今では洗濯機も掃除機も電子レンジもミシンも何でもかんでも全自動の家電が増えている。家電ばかりか自動車まで全自動だ。全自動は欧米人、特にアメリカ人が大好きなやつだ。日本の全自動はそのほとんどが”アメリカ生まれ”の最先端技術だった。全自動洗濯機を初めて見たときには、なんとバカでかくて水を無駄遣いする機械なんだろうと呆れたものである。

一方で日本人は「手先が器用で細かい作業が得意」なことでその強みを発揮していた。戦時中は「日本人は目がいい」という理由で好んで夜戦をしたという。だから日本ではレーダーや暗視スコープの開発が遅れたとも言われている。体力と根性さえあれば何とかなると思っていた。「ニッポン人に全自動なんかいらない」と強がっていた。全自動に頼るのは根性のない証拠だと思われていた。

しかし今では日本の家庭の多くには全自動洗濯機が置かれている。洗濯槽と脱水槽が分かれた2槽式の洗濯機など見たこともないという若者さえいるほどだ。お風呂もスイッチ一つで適温のお湯が適量溜められ、ボタン一つ押せばロボット掃除機が家中を勝手に掃除してくれる。オーブンレンジ一つあれば温めはもちろんのことグラタンや茶碗蒸しまで調理してくれる。もっともこれは調理する前の仕込みをすればという前提ではあるけれど。もはや今の日本人は”全自動”がないと何もできない民族に成り下がってしまった。

しかし日常的にロボット掃除機を使っていて感じるのは「ロボット掃除機は頭が悪い」ということである。”AI搭載”だのと言われて鳴り物入りで登場したが基本的にロボット掃除機にAIは搭載されていない。搭載されているのは「物にぶつかったり段差があれば方向を変える」ということだけである。自分でゴミやホコリを探して動き回ることもなければ”部屋の形を記憶”してくまなく掃除してくれることもない。闇雲に動き回るだけだ。

全自動ということは機械が勝手にやってしまうということである。勝手に意図していない動きをされることはウザいこともある。落ちているゴミのすぐ脇を通りながら素通りして別の部屋に向かうロボット掃除機を見ていると、自分で持ち上げてゴミの前に置き直したくなる。しかし仮にそうしたとしてもロボットはすぐに方向を変えてそのゴミだけを拾わないで別のところに向かっていく。頼むから勝手にやらないでくれと言いたくなる。

望むのは「やってほしいことだけをやってくれればいい」ということなのである。余計な親切はいらないから頼んだことをやって欲しい。でも全自動は頼んだことをやらずに余計なことばかりをする。

今の自動車は多くがオートマ車だ。オートマはオートマチック、英語で自動のことだ。車を運転する人はわかると思うが、長い坂道を下るときにはエンジンブレーキを使う。エンジンブレーキというブレーキがついているわけではないがシフトギアをして低速ギヤに入れて制動するやり方だ。しかしオートマ車ではギヤチェンジが全自動なので意図的なシフトダウンができない。

そんなときには下り坂でもアクセルを一瞬だけおもいきり踏み込んでやる。すると車は加速するために力を出そうと”自動的に”シフトダウンする。このテクニックをキックダウンという。一度シフトダウンしてしまえば”自動的”にエンジンブレーキがかかるようになる、つまり全自動を”騙して”車を操ろうというわけだ。もっとも今の車ではアクセルを踏まないのに加速してしまう状況では自動的にシフトダウンしてエンジンブレーキがかかる車も出ている。

ジェット旅客機にもオートパイロットという自動操縦装置がついている。空港を離陸して安定飛行に入ったらオートパーロットを起動して操縦は機械に任せるのだ。だから太平洋線などの長距離路線でもパイロットが四六時中緊張して操縦桿にしがみついている必要はない。

実はこれを使って自動で離着陸することもできるそうだが実際には離着陸はパイロットが手動で行っている。万に一つでも離着陸の際にオートパイロットが誤作動すれば重大な事故につながりかねないからだ。

ボクの祖父は洋服の仕立て屋だった。流石に店では電動ミシンは使っていたものの、ボタンホールやまつり縫いなどを機械に任せることはしていなかったし(そんな機能がなかったのかもしれないが)それは次の代に代変わりしても変わらなかった。その頃にはボタンホールやまつり縫いが自動でできるミシンが市販されていたにも関わらずである。

アイロンもフル手動だった。思い通りの温度や量で霧を吹くタイミングを機械に任せることはしなかった。それは機械が自動でやることを信用していなかったのと、全自動が返って非効率だということを知っていたからに他ならない。

我々の周囲にこれからも全自動が増えていくことは間違いないが、全自動で機械がやってくれるからといって人間がその技術を忘れてしまったら最後にはAIとは別の意味で機械に支配される世の中になってしまうのではないだろうか。