神奈川県には古くから人気のハンバーグレストランチェーンがある。ハングリータイガーだ。1960年代の創業というからもう50年以上の歴史がある。一時はO-157による食中毒や狂牛病(BSE)流行の影響で経営不振に陥って過半数の店を閉店せざるを得ない状況になったが、次第に業績は回復して今でも人気のレストランチェーンとして営業を続けている。

ハングリータイガーの一番の人気メニューは牛肉100%の直火焼きハンバーグステーキだ。直火のグリルの上で焼いて焦げ目のついた俵形のハンバーグが熱々の鉄板に乗せられて運ばれてくる。

ハンバーグの表面には香ばしい焦げ目がついているが中はまだ生の状態だ。これを店員が客席で半分に割って鉄板に押し付けて特製ソースをかける。鉄板の上では肉とソースが火口で煮えたぎるマグマのように暴れまわる。客は紙ナプキンを高く持ち上げてソースや脂が飛び散らないようにガードする。これがハングリータイガーの作法だ。

100%ビーフや当時では一風変わった食事スタイルも特徴だが一番の目玉はハンバーグの直火焼きだ。これを客に見せるために店内中央の一番目立つところにガラスで仕切られた直火焼きグリルが設置されている。オーダーが入ると生のハンバーグや肉がキッチンから運ばれてきて客の目の前で焼き上げられる。

ボクの知る限り東京・五反田にある個人営業のアルカサール牧場というハンバーグレストランも客に直火焼きを見せている。料理の提供スタイルはハングリータイガーとまったく同じだ。

どちらのレストランもこだわりは何かといえば100%ビーフハンバーグの直火焼きである。これがなければ他のレストランとの差別化はできない。実際、五反田のアルカサール牧場の近くにはミート矢澤という超人気のハンバーグレストランがある。こちらでは毎日、長蛇の列ができている。そのような立地でアルカサール牧場が生き残っていくには強烈なインパクトが必要だ。

ボクは何年か五反田に通っている中でどちらの店にも通っていた。もちろんミート矢澤もそれなりに美味しかったがボクが常連だったのはアルカサール牧場だった。直火焼きの香ばしさはミート矢澤では味わえなかったからだ。こだわっていることもアピールしなければ伝わらない。ミート矢澤のこだわりはボクには伝わってこなかった。

静岡の人気ハンバーグファミレスでは同じように牛肉100%”炭火焼き”のげんこつハンバーグがウリだが、ハンバーグはバックスペースで焼いているのでそのリアルさを客は見ることができない。もちろんそれでもどこの店に行っても長蛇の列ができて何時間も待つほど人気があるからいいのだけれど…。直火というだけでなくそれが炭火焼ならもっと積極的にアピールしてもいいのではないかと思ったりもする。

近所のららぽーとには”アメリカ生まれの”カールス・ジュニアというハンバーガーチェーンが日本に初出店した。値段が多少高いことと「所詮ハンバーガーだし」ということでしばらくは行くこともなかったが、ある時たまたま通りがかりにお店を見たら行列もなかったので持ち帰りのハンバーガーを買ってみた。

するとマクドナルドやモスバーガーとは違う直火焼きのパティが使われていて香ばしく、野菜もたくさん挟んであったのですぐに気に入ってしまい今でも時折訪れている。でも客にはそれを強くアピールできていない。これが店頭の一角をオープンキッチンにして直火焼きをアピールできていたらボクはもっと早くにこの店を訪れていたかもしれない。もちろん一口食べただけで鉄板焼きではないことはわかるが見せなきゃ分からないこともある。