かぐや姫、グレープ、中島みゆき、松山千春といえばひところ全盛だった(?)フォークブームを牽引してきた大物だ。かぐや姫からは南こうせつや伊勢正三、グレープからはさだまさしがソロになった。オフコースからソロになった小田和正もいまだに大活躍している。そんな中で北海道出身の中島みゆきと松山千春はちょっと変わり種だ。

ベストテン番組が全盛だった頃に最初は「オレはラジオを裏切らない!」「テレビには絶対に出ない」と言い張っていたが松山千春はやがてバンバンとテレビに出るようになった。しかしその頃には毛髪が不自由な人になって丸坊主になった。さだまさしも、お世辞にも頭髪が裕福とはいえず、アリスの谷村新司、松山千春、さだまさしはアデランスブラザーズと呼ばれた。そんな3人を弄っていたのが中島みゆきだ。

ボクが中学生の頃にヤマハのポピュラーソングコンテスト(ポプコン)でグランプリを取った「時代」は赤い鳥の「翼をください」とともにヒットして学校の合唱でも歌った。おそらくあの頃の中高生でこれらの曲を知らない人は皆無ではなかったかと思う。

しかし当時のフォークにはなんとなく根暗(ネクラ)なイメージがあった。かぐや姫は「神田川」で震える手で石鹸箱をカタカタ鳴らしていたし、さだまさしは「無念坂」や「精霊流し」でおどろおどろしい雰囲気を醸し出している。そして極め付けが中島みゆきだ。「あばよ」、「生きていてもいいですか」、「うらみます」、「わかれうた」、「ひとり上手」と息を持つかせぬネクラオンパレードだった。

しかし最近になって、というよりもあれから40年以上にわたって思い出したようにヒット曲を飛ばし続けている。もちろんテレビ番組や朝ドラのテーマ曲になったりすれば自然とヒット曲になるものが多いが、最近になって話題になっている「糸」はもう30年近く前に出した唄だ。それが今になって再び人気を得ているのには驚かされる。もちろん当時から一部のファンには人気があったが目立たない曲だった。

これはやはり同年代の山下達郎にも通じるところがある。彼の「クリスマスイブ」はボクが小学生の時に発表された曲だ。当時もクリスマスにはどこのラジオ局も「クリスマスイブ」一色だった。その後JR東海のCFにも使われ、今でもクリスマスになれば奥さんの竹内まりやが某フライドチキンのCMに載せて♪クリスマスは誰にもやってくる♪と一緒にあの夫婦の二人舞台だ。この二人の曲はいつまでたっても色褪せない。ただこちらは明るくて幸せいっぱいだ。

中島みゆきの唄は曲も素晴らしいがなんといっても歌詞に力がある。「ファイト!」という唄がある。

♪あたし中卒やからね、仕事をもらわれへんのやと書いた
 女の子の手紙の文字は、尖りながら震えている
 ガキのくせにと頬を打たれ、少年たちの眼が歳をとる♪

いくつもの言葉を積み重ねないと伝わらないようなストーリーや情景が「少年たちの眼が歳をとる」で百万語の言葉を一言で言い表している。まったくもって凄い人だと思う。こういう感性はどこから出てくるのだろう。そして唄は続ける。

♪ファイト!戦う君の唄を、闘わない奴等が笑うだろう…。

♪勝つか負けるかはわからない
 それでもとにかく戦いの出場通知を抱きしめて
あいつは海になりました♪

海になった”あいつ”への最高の応援歌だ。

そんな彼女がラジオの深夜放送で話し始めると曲のイメージがガタガタになる。北海道の旭川でさだまさしと松山千春と3人でラーメン屋に入ったらしい。お世辞にも頭髪が豊かとはいえなかった二人は揃ってわかめラーメンを注文したらしい。その有様を深夜放送でちょっと小バカにしながら面白おかしく喋っていた。あんな唄を歌っている人とは思えないギャップがファンにとっての魅力だった。

彼女の魅力はその曲もそうだが歌詞に出てくる言葉の使い方の旨さにあると思っている。特に情景や感情を表す言い回しは彼女に独特だ。忘れかけている歌詞を思い出しながら歌っていると、自分のうろ覚えの歌詞より格段に素晴らしい言葉に心を動かされる。それもこれもあのギャップが魅力なのだ。そういえばひところ樹木希林とフジカラーのCMに出ていたっけな。