どこの地方の風習なのかは忘れたが、生まれた赤ちゃんの将来を占うのに「選び取り」という行事があるそうだ。子供が1歳になった時に行うらしい。目の前にいくつかの品物を並べて置いて赤ちゃんをやや離れたところからハイハイさせて(早い子は歩いて)どれを選ぶのかを見るらしい。

赤ちゃんが財布や電卓を選べば一生お金には苦労しないとか、本を選べば将来は博士になるとか、櫛や鏡を選べばオシャレになるとか、スプーンや箸を選べば一生食べるものには困らないとか、何れにしても悪いことにはならない。農村と漁村の綱引きのようなもので農村が勝てばその年は豊作になり漁村が勝てば豊漁になるというのと似たようなものだ。

ある時ハイハイし始めた赤ちゃんは途中で急に方向転換して脇のちゃぶ台の上に置いてあったスマホに手を伸ばしたのだという。はてこの子は将来何になるのか?という話ではない。少なくとも字も読めずネットサーフィンもできない1歳の赤ちゃんにとってスマホが魅力的なはずがない。ではなぜこの子はスマホに手を伸ばしたのだろう。

人間は生まれながらに他人がやっていることに影響されると言われる。赤ちゃんは、いつもママが自分のことを放り出してでもいつもスマホを握りしめて大事そうにいじり回しているからだ。赤ちゃんはいつもママがやっていることを真似しただけなのだ。

子供は親が何をしているかを実によく見ている。家に入るときには鍵穴に鍵を差し込んでガチャガチャと回している姿を見ているから、部屋の中に鍵の束を放り出しておくと子供はいつの間にか見つけ出してところ構わず穴という穴に差し込んでグルグルと回し始める。なんの意味もないのだがママのやっていることを真似する。だからいつもママがスマホばかりを見ている姿を赤ちゃんは真似するというわけだ。

アマゾンや食べログのレビューを見てみんなが行列を作れば自分も同じように行列の後ろに並ぼうとする。誰かが新製品を買ったと聞けば自分も欲しくなる。「知性」や「知識」が人の意識を変えることはあまりないが「行動」はそれを見ている人の意識を無意識のうちに確実に変えていく。誰でも口では「他人の影響など全く受けていない」と言うがそれを見る前と後では間違いなく行動は変容している。

誰かの行動を変えようと思ったらいちばん効果的な方法はまず自分が行動することだ。