ボクは著書でもしつこいくらいに書いたつもりだがなかなかわかってもらえないことがある。目の前で膝詰で話しても(念のため、1月以前の話です)わかってもらえないのだから本に書いたところでわかってもらえるはずもないし、そもそも本を読んでくれた人などほんの一部の人に限られている。

ここ数十年の間に全国で大きな自然災害が続いた。その度に話題になるのが「相手の気持ちに寄り添う」という言葉だ。大体のところは、相手の気持ちになって一緒に悲しんだり笑ったりして励ましあっていこうよということなのではないかと思っているが、話をしてみるとその本質はボクが思っていることとはちょっと違うのだ。

でも誰かと話をしていると、同情して一緒に悲しんだり怒ったりすることこそが「心から寄り添う」ことなのだと思っている人のなんと多いことか。同情することと寄り添うことは別のことだ。昔のテレビドラマのセリフではないが、「同情するなら金をくれ」というのが本当にお金に困っている人の本音だろう。同情などいくらあっても食えない。

寄り添うということと実際に相手の立場になって体験するということは全く違う。「寄り添う」ということは相手を外から見て自分が同情したり共感することだと思っているが、実際には自分が相手と同じ立場で経験しているわけではない。気分が悪くなるほどお腹が空いているわけでもなければ住む家がないわけではない。夜になれば自分の寝ぐらに帰って幸せな気持ちで寝られる人間に、寝る場所もない人の気持ちなどわかるはずがない。

外から見ることと内部で現実を経験することとは全く別のことだ。現実にその場でそのような境遇にいる人は24時間その境遇から逃げ出すことはできない。外からちょっと覗き見ただけで「気持ちわかるぅ〜」などと言われたくない。だから相手の本当の気持ちを理解するには、なんでも「経験する」ということが大切なのだと感じている。

マーケティングや販売・営業の現場では「お客様の気持ちになって」ということがよく言われる。しかし実際に体験していなければ「気持ちになる」ことはできない。「お客様の気持ちになる」のではなく「お客様になって」経験してみれば見えなかったことが次々と見えてくる。立場が違えば見える景色は異なるのである。