中学生だった頃、ちょっと背伸びをしてFMラジオでジャズなんかを聴いたりした。日本人なら渡辺貞夫さんなどが有名だったが新進気鋭の山下洋輔さんなどもいた。それは”前衛ジャズ”などと呼ばれていて和音もメロディもへったくれもないような無茶苦茶な音楽とも言えないような音楽だったと記憶している。その中で外タレ(外人タレント)としてチック・コリアがいた。

NHKの朝イチにチック・コリアが出演して演奏しているのを見て思い出したのだが、タレントのタモリさんはかつて若かった頃、チックコリアの演奏を「空手のようなジャズ」と言い、「私はこのようなジャズを『スポーツジャズ』と呼んでおります」などとネタにした上でグランドピアノでチック・コリアのモノマネをしていたものだった。もう40年以上も前の話だ。

ジャズピアニストの山下洋輔さんは上野にある東京文化会館で初めてジャズライブをやったことで有名だが、そのときに会場のスタインウェイ(世界的に有名なグランドピアノメーカー)を壊したらしく、それ以降出入り禁止になったと聞く。とにかく破茶滅茶な演奏だった。中学生のボクには到底理解できるようなシロモノではなく、恐らくはもう一生聴くことはないだろうと思っていた。

彼らの破茶滅茶さはアドリブを弾き始めたときに本領を発揮する。昔「徹子の部屋」にタモリが出演したときに、彼らのモノマネをするにはピアノの白鍵だけをめちゃくちゃに弾けばいいのだと言っていた。黒鍵を混ぜて弾いてしまうとあの破茶滅茶さは出ないらしい。

ところが去年のことだがAmazonミュージックにチック・コリアのアルバムが無料で(プライム会員なのです)公開されていたのを見つけて聴いてみた。すると驚いたことに彼の多くの演奏は破茶滅茶などではなく、もちろん不協和音は多用されているが)メロディーもコード進行も気持ちのいい情感溢れる曲だった。

今では仕事のBGMにチック・コリアを聞くことが多い。メロディーラインが鮮明でない曲が多いので却って気が散ることもなく、なんとなくダラダラと聴きながらも頭の中が煮詰まってしまうこともなくいい感じで付き合っている。歳をとると好みも変わってくるものだが、子供の頃に苦手だったものも大人になると美味しく感じたりするのだから、音楽も昔の思い込みを捨てて気軽に付き合っていければいいなと思う今日この頃だ。