新たに何かを始めようとする時に今までの事例を参考にしたり経験者の体験談を聞くことがある。「前者の轍を踏め」(笑)というわけだ。特に前例があまりないようなことだと何をどうやって始めたらいいものか途方に暮れてしまうことも少なくない。そんな時に経験者の話を聞いて参考にすることはとても役に立つ。初めて行く旅行先なら行く前にガイドブックを読んで下調べをするようなものだ。何もわからずに行き当たりばったりでハプニング続きの旅もそれはそれで楽しいが、スケジュールをビッシリ詰め込んで観光地をはしごするのがあ好きな人ならほんのちょっとでも時間を無駄にしたくないのだろうと思う。

旅行でもなんでも予備知識なしに自分が初めて取り組むことにはトラブルやハプニングなどすんなりといかないことも多い。それは開拓者の宿命である。かつてボクが通っていた高校は当時新設校だった。ボクはその4期生で先輩が全くいなかったわけではないが部活動も野球部やバレー部などの基本的なものだけはあったがそれ以外はほとんどなかった。だから部活動で自分が何かをやりたいと思えばまずはクラブを立ち上げるというところから始める必要があった。

ところが中学校までは創立100年というような古い学校で育ち、ほとんどのものが既に揃っていたので”なければ作る”というような経験はほとんどやったことがなかった。そんな中でボクらは3つの部活を新しく作った。メンバーを集め、先生を説得し、活動場所を確保し、軍資金を集め…、幾つもの障害を一つ一つ解決しながら新しいものを作った。後から考えれば「ああすればよかった」「あんなことしなければよかった」と思うこともたくさんあるがもう後の祭りである。

最近もそんな経験者の話を聞く集いがあったのだが、集まったいい歳をした大人たちが口にしたのは「どうしてそうしようと思ったのか?」ではなく「そんなことしないでこっちのやり方をしたほうがいい」という終えから目線の発言ばかりだった。聴衆たちは自分たちがどう取り組んだものか考えあぐねて話を聞きに来ているはずなのに、いつの間にか”先駆者”に向かってアドバイスを始めたがるのだ。あなたたちは自分たちだけでは何もできなかったくせに、誰かがやったことに対して批判することだけはすぐにできるんですねと言ってやりたかったが、ボクよりずっと年上の人たちばかりだったのでやめておいた。

自分は何もやっていないし何もでないのに他の人が苦労してでも始めたことを上から目線で批評したがるのは何故なのだろうか。そしてその傾向は圧倒的に男性に多い。それはおそらく「誰かの役に立ちたい」という気持ちより「俺ならもっとうまくできる」という自信を見せびらかしたいのだろうと思う。今まで自分では何も始められず何もできなかったくせにだ。「他人より優れているところを見せたい」という欲望は男に多い感情だ。「男はすぐにペニスの大きさを自慢したがる」のは原始的な生き物だった時代の名残だろうからそう簡単に捨てられるものではないのだろう。しかし、しかしだ、

”教えを乞う”立場の人間としてそのような立ち振る舞いを恥ずかしいと思わないのだろうか。自分には何もできなかった時点で既に何かを始めているその人より明らかに劣っているのだ。だが自分の劣勢を挽回しようとして、自分を少しでもよく見せるために「俺はあれもやった、これもやってきた経験豊富な人間だ」と誇張したがる。何とも哀れな姿に思えてしまうのはボクだけだろうか。