以前に「としまえん」のCMについて書いたことがある。東京の練馬区にあるのに「としまえん」というところが千葉にある「東京ドイツ村」に通じるものを感じないでもないがその歴史はとしまえんの方がはるかに古い。

としまえんの広告はあまり金がかかっているように見えないがとことん考え抜かれたジョークに満ち溢れていた。以前に書いたコラムで挙げたのは、東京で暮らしている姉のところに夏休みに田舎から東京見物にやってきた弟と姉の会話をシュールに描いた”作品”だった。

としまえんは他にも数々のヒットCMを世に問うてきた。エイプリルフールには「史上最低の遊園地」というどでかい新聞広告を出したり、テレビの中の大木に何百匹ものセミがとまってただじーじーと鳴いているだけのCMだったり、「プール冷えてます」というほとんど文字だけのポスターだったりと人を食ったようなバカバカしくも笑える広告を出し続けてきた。

そんなとしまえんが開園から90年の歴史に終止符を打つのだという。実のところボクはとしまえんに行ったことはない。だからとしまえんの思い出といえばテレビから流れていたコマーシャルだけである。そういう意味では「小山ゆうえんち」と並び称されるべきかもしれないが、広告のひねり具合では圧倒的にとしまえんに軍配を上げたくなってしまうのだ。

関東地方にお住まいでない方のために一応申し上げておくと、「小山遊園地」は栃木県小山市にあった遊園地で「♪オヤマ、アレマ、小山ゆうえんちぃ〜♪」という桜金造が歌うCMで有名だった。一方の「としまえん」は東京都練馬区にある遊園地で練馬なのに豊島園というネーミングからしてフザケている遊園地だ。ボクが昔勤めていたホテルと同じ某鉄道会社系の経営である。恐らくテレビCMは関東地方だけで流れていたのだろう。関西で言えば琵琶湖畔にあった「はだか~天国! 紅葉パラダイス!」のようなものだろう。

千葉や大阪に巨大テーマパークができた頃から入場者数が減少し始めて経営的にも厳しいという話は伝え聞いていた。テレビでインタビューを受けている人たちは一様に「なんだか寂しいですね」などと言っているがその実、自分たちだって何十年も足を運んでいなかったわけで、思い出だけでは食っていけないといういい例だろう。

ボクの住んでいる神奈川にもかつて「横浜ドリームランド」という巨大な遊園地があった。いやまだ幼稚園の頃だったので巨大な感じがしただけなのか実際に巨大だったのかはわからない。中学生の時の「卒業遠足」で最後に訪れたときにはその敷地の半分以上が買収されてなくなってしまっていたからその時には友達と「小っさくなっちゃったなぁ」と言い合ったものである。ただその後も高校時代の後輩が「兵隊さんの行進」のバイトで大太鼓を叩きながら園内を歩いていたというからしばらくは延命していたらしい。しかし今では既に古くなった巨大マンション群が建っているばかりである。

横浜ドリームランドはもともと奈良にあったドリームランドを模して作られたものだという。ボクは奈良のドリームランドにも一度行ったことがある。あの頃は他にも田園調布の「多摩川園」や小田急線の「向ヶ丘遊園」などいくつかのローカルな遊園地もあったが時代とともに次々と閉園していった。そして今では巨大なテーマパークばかりに集約されている。

遊園地やテーマパークに限らずどこに行っても”金太郎飴”のような代わり映えのしない施設ばかりになってしまったのは残念な気持ちになることもあるが、それが良しとされたのも時代の流れなのだろう。その時代を生きている子どもや若者たちの趣向はこう行ったところにも反映されているわけだ。それを中高年が「つまらなくなったなぁ」などというのはそれこそ「遅っくれってるぅ〜」ということなのだろうと思う。

かつてCMコラムニストの天野祐吉さんがおっしゃっていたように、

もともと遊園地というのは、考えたり話し合ったりする場所ではない。身を粉にして遊ぶところである。人間遊ぶときには、決していい加減に遊んではいけないのだよ、キミ

ということなのだ。そして「としまえんの広告」に乾杯!