ボクは赤緑色弱である。そのことが分かったのは小学校の色覚検査の時だ。保健室で先生が差し出すカードを見て「ここに書いてある字は?」と訊かれたがその中の何枚かには字など書いてなくただの色の異なるツブツブが乱雑に並んでいるだけだった。「何も書いてありません」と言うと先生は「これだよ!ここに書いてある字を読めばいいんだよ!」としつこく訊いてきた。しかし書いてないものは書いてないのだ。「だから何も書いてありません」と答えるとボクの周囲は大騒ぎになった。

実はそれ以前に自分が色弱だということはわかっていた。家にあった「身体の図鑑」に載っていた「色覚検査表」が読めなかったからだ。だがその時は「困ったことになった」とは思わなかった。別に交通信号がわからないわけではないし普段の生活の中でも普通に(何が普通なのかはわからないが)色の区別はできていた。唯一困るのが色覚検査表なのだ。

検査が終わって教室に戻るとボクの机の周りには人垣ができた。クラスの友達は青や黒や白の下敷きを持ってきては「これ何色だ?」と質問してくる。でも黒を「黒だ」と答えても「え〜これは赤だよ」などとウソをついてからかってくるのは目に見えていたので「あー、これには鯨が描いてあるなぁ」などと口からでまかせを言っていたらそのうちに飽きたらしく自分の席に戻っていった。

困ったのはその後に教室に戻ってきた担任の先生の対応だった。「鳥巣くんは色が分からないので優しくしてあげましょう」などと言い放ったのである。オィオィ冗談はよしこちゃんである。それから先生は教室の中にあるものの色を当てるクイズを始めた。そしてあろうことか先生までウソをついてボクをからかったのだ。これは今で言う”イヂメ”ってヤツだったのだろう。可哀想なヤツだと言いながら教師までからかうというのはどういう神経なんだろうと思ったが放っておいた。

その後は車の免許も取ったし船舶免許も取った。車の免許は別段どうということもなかったが船舶免許の色覚検査ではやや緑がかった白色と薄茶がかった白色を区別するときにドキドキしたがなんとか合格した。でも色覚検査は最初の1回だけなので、免許の更新時にはハラハラする必要がないのはラッキーである(笑)

そしてもう一つ困ったのが”顔色”が分からないということだ。クラスで誰かが急に熱を出して顔色が赤くなっていてもボクにはよく分からない。女の子と話をしていたら友達に冷やかされて「顔が赤くなったぁ!」などと言われたこともあったが、その女の子のことは特に好きでもなかったので冷やかされても顔が赤くなるわけはない。でも「赤くなった!」などと言っていたのだからあれもウソだったのだろう。

それでも目の前の人の具合が急変して顔が赤くなったり青くなったりした時に全く気づかないでいるのも如何なものかと思うので、危険を感じた時にはできる限り知り合いかどうかに関わらず誰かに同席してもらうようにしている。特に学生時代は猛烈な勢いで酒を飲まされる飲み会が多かったので容態が急変する人は普通だった。もっとも同席させた人も色弱だったりベロベロに酔っ払っていたら顔色が変わったくらいでは気づかなかったかもしれない。

というわけでボクは人の顔色を伺うことが得意ではない。だからボクの前で「人の顔色に気づかない鈍感なヤツだ」と蔑むのはやめていただきたい。それはとりもなおさず「障がい者」を虐待することなのだ。わかるかな?わっかんねぇだろうなぁ〜。