小さなことでも何か事件が起きればマスコミ、特に民放はセンセーショナルに報道します。報道番組とはいえ視聴率が取れなければスポンサーに降りられてしまうからです。ですから結果的にはどうということないことでも大げさに騒いで世間で話題になるように情報を操作するわけです。そんな時にパッと見の話題性だけで物事を判断しようとすれば方向を見誤ることになりかねません。

このところ徴用工問題をきっかけに日韓関係は急速に冷え込みました。日本政府は徴用工の問題と輸出管理を厳格化したことは関係がないと言っていますが、誰が見ても報復措置であることは明らかです。もっともそれをどうこういう気はありません。「やられたらやり返す」「目には目を」は国際社会ではいたって普通のことです。

先月の日本の大手ビールメーカー4社の対韓ビール輸出額がゼロになったと言います。2018年9月の輸出額が7億8485万円だったのに対して2019年9月は58万円と大きく落ち込みました。率にして99.9%を越える落ち込みです。原因は韓国での日本製品の不買運動だと言われています。しかし日本のビール業界を見てみるとここ15年近くは右肩下がりで出荷額が落ちているものの2018年は大手5社の合計で4億ケース近く、大瓶1本350円として1兆2800億円の計算です。ビール業界全体から見れば8億円程度の落ち込みなど変動の範囲内です。それよりもここ1年の国内での落ち込みが7000億円近くになるわけですから韓国への輸出が減ったことなど誤差にもならないくらい些細な出来事なのです。

輸出がゼロになったと聞くとあたかも大変なことが起きたように聞こえますが、そもそもビールという商品自体が非常に地域色の濃いものです。日本にスーパードライやモルツ、一番搾りやサッポロ黒生があるようにオランダにはハイネケンがありデンマークに行けばカールスバーグがありアメリカにはバドワイザーがあります。フィリピンにはサンミゲルがありタイに行けばシンハーやチャーンがありインドネシアにはビンタンがあります。日本のビールは海外でも有名ですが現地で売られているビールのほとんどは地元のビールです。韓国でも飲まれているのは93.8%が国内のビールであって日本のビールのシェアは5%程度に過ぎませんでした。韓国人にとっても日本のビールなどどうでもいいわけです。

物事は問題の切り口によって全く正反対のことを主張することができます。偏った見方をすれば全く見当違いの方向を向いてしまいます。それを意図的に勘違いさせようとデータの切り口を変えて見せることは先のテレビニュースの例でも明らかなように日本でも普通に行われています。巷にはたくさんの情報があふれています。その中から本当に重要なことを見つけ出すのは大変なことです。しかし意図的に誤解させようと誰かが企んでいる時には必要以上に強調して大げさに声を上げるものです。だから大騒ぎになっているような大問題が報道されればその裏で何かがこっそり行われていると考えるのが正しい見方でしょう。

世間の流行や大騒ぎに巻き込まれずに全体を俯瞰して自分で考えることこそが大切です。他人の意見はあくまでその人個人の見方でしかありません。その上に様々な企みが乗っかっています。有名人だから肩書きがあるからというのは決してその人の価値や正しさを表すものではありません。噂話やSNSでの流行り、マスコミが大騒ぎし始めたらそこには必ず裏があります。身の回りのことを限られた角度からだけ見ることなく正しい道を進むには、何事も鵜呑みにしないで自分自身で深く考えて洞察することが最も求められているスキルなのです。