中年とは何歳くらいの人のことを言うのだろう。NHK放送文化研究所の調査によれば40.0〜55.6歳が中年の平均値になったのだという。来年56歳となるボクはまさに後期高齢者ならぬ後期中年者、いや末期中年者とも言える。いつから中年になったのかはあまり自覚はないが、今にして思えば”オジサン”と呼ばれるようになった頃から中年期になったのだろう。オジサンになったからといって取り立てていいこともなかったが悪いこともなかった。言ってみれば人生が平々凡々と過ぎていく太平の時期だったのかもしれない。

去年の流行語に「おっさんずラブ」という言葉がノミネートされていた。テレビドラマのタイトルらしいがボクは見たことがないのでストーリーも役者も知らない。だが”おっさん”のイメージといえば昔から「汚い・臭い・気持ち悪い」の3Kと決まっている。かつては思春期の娘や奥さんから洗濯に出したお父さんのパンツを割り箸でつまんで汚物のように扱われ家庭内で嫌われ者の代表のように言われていた。どうしておっさんずラブなのか理解できない。ラブとおっさんはまったく相容れない存在なのである。

自分がオジサンやオッサンと呼ばれるたびに「オレも汚物のように思われてるんだな」と思うことはあったが、だからといってそれを悲観したり腹立たしく思うこともなかった。それがオジサンであり中年の正しい在り方だと思っていたからだ。

ところが最近では若い女性の間でオジサンを見る目が変わってきているという。いや誤解のないように最初に言っておくがオジサンのことを好きになったということではない。オジサンファッションを真似する若者が出てきたということだ。わざとダサいスニーカーを履いてみたりワークマンで買った万能ベストや安全靴を履いて表参道を歩いてみたりする女の子が増えているのだという。もっともボクの暮らしている平塚ではまったく見かけないのでおそらくは尖ったファッションが好きなごく一部の若者の支持を受けているに過ぎないのだろう。

オジサンは顔は脂ぎっていてももはや貪欲さは薄れて一般的にあまりギラギラしていない。ほどよく脂の抜けた安全パイである。若者のような将来性はないがその代わりに大きな失敗をしそうもないという安定感がウリだ。いや別に売り出しているわけでもないが一般にはそう見られている。ほどよく抜けた脂はそのままお腹周りに蓄積されて丸みを帯び、それが人生の余裕や性格の丸さを感じさせることもある。

だからと言ってオジサンはそれを自分の武器にしようなどと思ってはいけない。所詮はオジサンでありオッサンなのだ。前期中年者が中期中年者になる頃にはオッサンを勘違いしてやたらと元気になる、いや元気に見せようとする中年が増える。でも所詮はただの中年であり体力的にも若者には歯が立たない。わずかばかりの経験や知識を小出しにして若者たちから重宝がられる存在として路傍の苔のように湿った土のわずかな水分を吸い取りながら細々と生き延びていくしかないのである。

でも中には苔の良さをわかってくれる人も出てくるかもしれない。もっともその人も苔のような中年オジサンであることが多いのだが…。