大きな災害が起きるとニュース番組の中で必ず”被災者の生の声”が放映される。自分が想像もしていなかった事態に茫然自失している民間人に向かっていきなりマイクを向ける。「今のお気持ちは?」だと?顔を見ればわかるだろう。「これからどうされますか?」「何が必要ですか?」いきなり土足で踏み込んでくるマスコミ連中には被災者を慮る気持ちの欠片もない。一秒でも早く可哀そうな被災者の姿をあぶり出して視聴率の取れる絵をデスクに送り込むことだけが彼ら彼女らの使命だ。

今の気持ちなんて後になって落ち着いてから改めて考えるものだ。その時には何も考えられないし状況も分からないのにどうしたらいいかなんて分かるわけがない。何が必要なのかなんてその時になってみなければ分からない。「被災者の気持ちに寄り添う」などと心にもないことをヌケヌケと言い放つマスコミの記者連中に人の心などない。自分とは無関係な可哀そうな人たちをダシにして番組を作ることだけに専念している。

東京の綺麗なテレビスタジオでアナウンサーが現場で取材している記者に向かって「被災者に話を聞きましたか?」と言っている。まだ災害の真っただ中で絶望的な被害を被っている人に何を聞こうというのだろう。被災直後の被災者が思っていることは「驚きました」「怖かったです」「これからどうしたらいいのかわかりません」「まさかこんなことが起きるとは考えていませんでした」などなど、今までの災害現場で散々聞いてきて分かっていることではないのか。そんな話しか出てこないことは分かりきっている。被災者に寄り添うというのならマスコミがやるべきことは混乱している現場に大勢でズカズカと上がり込んで迷惑をかけることではないはずだ。

消防、警察、自衛隊の迷惑にならないように遠くからその様子を見守っているだけでいいではないか。現場の記者も大慌てで「い、今、犠牲者が一人運ばれて行きます!また犠牲者が一人増えた模様です」などと鬼の首を取ったように金切り声を上げる必要などない。質の悪いスケベ根性丸出しで悪趣味なやじ馬に成り下がっている。

先日JR新宿駅で人身事故が起きた。ホームのブルーシートに囲まれた現場で救護活動をする消防や駅の係員がいる一方で、ブルーシートの隙間からカメラを差し込んで中の事故現場の写真を撮ろうとするヤツが大勢いたという。駅員がその連中に向かって構内放送で「モラルを守って行動してください!」と言っていたが連中にやめる気配はなかったという。マスコミに送り付けて「俺が写したんだぜ」と自慢したいのだろうが人間性というより精神構造を疑わざるを得ない。もはや頭がおかしいのだ。

これはモラルなどという話ではない。気違いだ。日本人の精神はもうダメになっている。