♪子供の頃からエースで4番♪

プロ野球「巨人」の選手たちが高らかに歌い上げるオロナミンCのCMだ。ボクが20代だった頃から放映しているが、ボクは子供の頃からエースや4番どころかレギュラーにもなれなかったので何の思い入れもない。

考えてみればプロ野球選手なんて、高校野球で甲子園に出てくる球児の中でもほんの一握りの天才たちだけが手にすることのできるポジションだ。もちろん野球有名校のそれぞれのポジションの選手たちも優秀な人が揃っているが、その中でプロに行って活躍できる人なんてほとんどいない。

その中のほんの一握りの人だけが手にすることのできる栄冠だ。そんな子供たちはほとんど全員が「エースで4番」だった子供だ。チームのキャプテンで、投げてよし、打ってよし、走ってよし、守ってよしのスーパーヒーローだ。常に他のメンバーから尊敬され羨ましがられる存在だった。そんな特別な子供だけが集まったのがプロ野球チームだ。わがままでないわけがない。かつて高校球児で甲子園にまで行った友人が言っていた。「ロクな人間おらへんでぇ〜」
そりゃそうだ。わがままな上に傲慢で、ほとんどの場合は野球以外は凡人並みかそれ以下なのにだ。

かつての栄光にすがってプロ野球にまで上り詰めると、そこには全国はおろか世界中から集まった”エースで4番”ばかりが集まっている。今度はその中で新たなヒエラルキーに参加すべく競争が始まる。しかも最初はほとんどが年上の”先輩”だ。自分は最下層にかろうじて席を置かさせてもらっているに過ぎない。

それでも運良くルーキーとして活躍できたなら幸運だ。ほとんどの選手は”鳴かず飛ばず”でダメな新人というレッテルを貼られる。自分の人生で恐らく初めて”敗北者”という惨めな立場に突き落とされる。今までずっとトップを走っていただけにその精神的なショックは耐え難いものかもしれない。それでも彼らはかつてエースで4番だった誇りを胸に前に進み続けるのだ。

これは野球だけの話ではない。普通の生徒だった子供が勉強を重ねてクラスでトップの成績になり学年トップになって卒業し、東大や京大、阪大、早稲田、慶応に合格したとしても同じような運命を辿ることになる。それでもごく一部の天才や秀才たちは大学も優秀な成績で卒業するかもしれない。しかしその後彼らは新人官僚となり、有名大手企業の新入社員になる。彼らがそこで目にするのは理不尽なまでに彼らの過去の栄光を否定する環境だ。

「いつまで学生気分でいるつもりだ!」「学校で何を教わってきたんだ!」「今度の新人、使えねーなぁ」「使えないくせに生意気なんだよ」。今度はただの先輩ではない。上司だ。指導ではない。命令される毎日が定年まで延々と続くのである。

それでも最近は無茶な命令や指導はもちろん、普段の会話の中でも強圧的な言動が見られるとパワハラやセクハラなどと言われて下克上の憂目に遭いかねないので、以前に比べれば多少はマシになってきたところもある。

それでも今まで学校で教わってきたことなど一般の企業に就職してしまえばほとんど役に立たない。伝票一枚書けず、見積り一つ作れず、報告書が満足にかけるようになるまでには何年もかかる。その間は上司や先輩社員の罵詈雑言にじっと耐えながら過ごさなければならないのだ。こんなことなら商業高校に行って伝票や稟議書の書き方でも勉強しておけば良かったと思うが、後の祭りである。

戦力外通告を受けないように定年まで大過なく過ごすにはどれほどの忍耐がいるのだろう。元気ハツラツで勝利の合言葉を謳える日は来るのだろうか。