最近では和式トイレの”大”を公共の場所で見ることが少なくなった。中には和式トイレの使い方がわからないという子もいるという。ボクらが小中学生、いや成人してもしばらくは公共トイレの”大”(=個室)の便器はほとんどが和式で、その上にしゃがんで用を足すスタイルだった。もっともボクの家のトイレは公団の団地だったので幼稚園の頃から洋式の便器になっていた。だから祖母の家(当時はまだ汲み取り式だった)や友達の家に行った時にしか和式トイレを使う機会はなかった。

和式トイレの前方の便器の丸くなっているところを通称”金隠し”という。子供の頃には「男なら金隠しもわかるけど女にも必要なんだろうか?」などとバカなことを考えていた。そもそも男だってトイレにしゃがんでフルチンになってまで”金”を隠す意味がわからない。閑話休題。

先日やっていたテレビ番組(ブラタモリ・NHK)である歴史研究者の人が江戸時代の古い木製の便器の前方部分を指差して「これをなんて言いますか?」と タレントのタモリさんに訊いていた。タモリさんが「金隠し」と答えると「そう金隠しですね、でも古くは”衣かけ”と言ってんです」と話していた。そして続けて「実は今とは便器の前後が逆なんです」というのだ。つまり”金隠し”のほうにお尻を向けてしゃがむのだという。ちょっと股間がすかすかして落ち着かない感じではあるが、昔は和装だったので着物の裾を汚さないように今でいう金隠しの部分に着物の裾の後ろ側を引っかけてしゃがんだのだという。だから”衣掛け”である。

ふと思いついてネットで「衣かけ」を検索してみると出るわ出るわ、得意満面の説明と一緒に「現代人は和式便器の使い方を間違っている!」と断言する人までいる。そりゃ昔は意味があって衣かけとして使っていたのかもしれないが今は”金隠し”であって”衣かけ”ではない。今の時代に「それはそもそもは逆なんだよ」と持論(受け売りだが)を展開して無理強いしようとするのはそれこそ時代錯誤というものだ。

極端なことを言い出す人はどこにでもいるが、そんなしゃがみ方したらトイレットペーパーを取るのが大変じゃんね。