あなたは今までに意識を失ったことはあるだろうか。意識を失うということは”意識がなくなる”ということなので「あ、今自分は意識を失ってるな」と思うこともないのだろう。実は、もうずいぶんと昔のことだがボクは意識を失ったことがある。たぶん小学校の4,5年生だったと思うが、ある日曜日の昼下がりのことだ、自宅の机の前で椅子に座っていたボクは何に前触れもなく急に意識が遠のいた。それからどれくらいの時間が経ったのかはわからない。日が傾いたりもしていなかったのでたぶんそんなに時間は過ぎていないと思う。気がついたら椅子は床に倒れておりボクは床の上に転がっていた。自分でも何が起きたのかわからなかった。たぶん椅子の上から床に転がり落ちたのだと思うが、幸いどこもケガをすることはなかった。それがボクの覚えている唯一の気を失った体験だ。

もちろん病院で全身麻酔をされて意識を失ったことはあるが、それは「意識を失わせますよ」という前置きがあってのことだし感覚的には普通に眠くなって寝ることとそう大きな違いはないような気がする。そう、我々はほぼ毎日5時間も6時間も、いや時には10時間も意識を失っている時間がある。考えてみれば寝ているときには意識がないのだ。
意識を失うというのは”生きている”という意味ではかなり深刻な状態だ。生き物としてまったくの無防備な状態である。いわゆる外見上の”重体”のときの状態でもある。そして意識は失うことも取り戻すことも”意識的”にはできない。常に自分の身体任せだ。身体が自然にそうしている。マンガ”ドラえもん”の中ではのび太君が「僕はいつでも3秒あれば寝られる」と言って3つ数える間に昼寝に入る場面があるが、それものび太君が自分で”意識のスイッチ”を切って意識がなくなったわけでもなさそうだ。逆にスイッチを切って寝るのはドラえもんだ。

毎晩の睡眠の時でも、ボクは意識がなくなる瞬間のことは覚えていない。時間が経って無意識に目が覚めた時に「あ、眠ってた」と思うだけだ。意識が戻ったから意識を失っていたことに気づくのは、ボクが子供の頃に自宅の机の前で経験したのと同じ状態だ。睡眠中の脳波を計る実験などでは外部で脳波を見ている人が「今眠りました」ということはあっても被験者本人が「今眠りました」と意識することはないのではないかと思う。ボクは他の人のことは分からないが、意識がなくなったということをあるいは”眠りに入った瞬間”を明確に意識したことのある人はいるのだろうか。

それでもボクは最近、意識して意識を失うような方向に自分の身体をもっていくことができるようになってきた。今までは寝床に入ってから1時間も寝付けないことが普通だったのに、最近では10分くらいで寝られるようになった。さらば睡眠障害だ。そのコツは”意識して何も考えないようにする”ことである。特に昼間あったことなどを思い出したりすることがなかなか寝付くことができない一番の原因だと思っている。ボーッとしているといろいろなことが思い出されてきてしまうので「もう何も考えない!」と決めて明日のことも忘れて瞑想モードになると割とすぐに(たぶん)数分で眠ることができる。何も考えないように意識することで毎日”意識的に”意識を失うことができるようになってきたのではないかと思う今日この頃だ。ただ寝るだけなんですけどね。