第三極の意義

かつて日本には3つの大きな航空会社があった。日本航空、全日空、東亜国内航空だ。テレビドラマの「北の国から」をやっていた頃、北海道の旭川空港には道内便を除けば東亜だけが飛んでいた。だから古いビデオには「協力 東亜国内航空」のクレジットが残っているとはずだ。東亜国内航空はもともと各地に路線を持っていた中小の航空会社が合併してできたものだったらしい。僕が生まれる以前の話だ。僕が物心ついた頃には「東亜国内航空」の名前で主に国内の羽田や大阪とローカル空港を結ぶ赤字路線やローカル空港同士を結ぶ超赤字路線を多く抱えていた。そのうちに経営が立ち行かなくなり”破綻”だ”倒産”だとの噂もあったが、日本政府が1県1空港の箱物を推進していた矢先でもあり、ローカル空港の路線をなくすべきではないという大義名分のもとに日本航空(JAL)に買い取らせた。その名残は「日本トランスオーシャン航空」や「北海道エアシステム」「琉球エアコミューター」などのJALグループ各社に残っている。

一方で北海道とは「Air Do」という航空会社が出来て(当初は別の名前だったが現在は社名もAirDo)「北海道の翼」として一時的には隆盛を誇ったが、あっという間に経営不振となり、現在ではANAの息がかかっている。現在では国内でもLCCにスカイマークやピーチ、ジェットスター、ソラシドエア、スターフライヤー、バニラエア、エア・アジア、春秋航空などの航空会社が名を連ねているが、現在ではジェットスター、エアアジア、春秋航空の海外資本の会社を除けば、ほぼすべてのLCCに多かれ少なかれ全日空の息がかかっている。日本航空はかつてナショナルフラッグシップといわれて日本を代表するエアラインだったが、2010年に経営不振で倒産したため再建されるまでの間に全日空による日本の航空業界の支配は進んだ。

国内航空業界は以前からJALとANAの2社による寡占状態が続いていた。国内での競争が実質的になかったため国内線航空運賃は高止まりしており競争にさらされている国際線と比べて非常に高額だ。最近では各種割引価格も提供しているが正規料金で比較すると、国内の大手2社では東京-沖縄間の往復で5万円近くにもなるのに対して、海外のエアラインではヨーロッパ往復を10万円強で提供している。飛行距離で考えれば国内線の料金は国際線の6倍もすることになる。国内線の料金の高さは未だに改善されていない。

そんな中で”競争がないから良くならない、第三極になって日本の空を変える”という大志を抱いて国内の航空業界に乗り込んだのがかつてのスカイマークだった。スカイマークは旅行会社のHISなどが出資して作った独立系航空会社だ。しかし低価格で参入してみるとスカイマークの運航便の前後に大手2社が飛ばす便では、その便だけをダンピングしてスカイマークを潰すやり方に出た。業界弱者に対する圧倒的な大手の力を見せつける戦略に出たのだ。経営が悪化したスカイマークは国際線への参入や新機種の導入計画が裏目に出たこともあって2015年に経営破綻してしまった。しかし今でもANAの息はかかっているものの独立独歩の精神だけは忘れずに再び戦いを挑んでいる。

スカイマークのこの精神には学ばされることが多い。「みんなでやれば怖くない」的な政府主導の護送船団方式が大好きな日本にあって、”お上に楯突く”姿勢で世の中を正そうとする精神には感服する。日本の航空業界を寡占化させてはならない、大手だけに業界を牛耳られていては国民のためにならないという大志には心を打たれる。第三極は絶対に必要なのだ。

国会での野党にも似ている。今の日本の国会は自民党の一強である。小物の野党はいくつかあるがハッキリ言って物の数には入っていない。今の野党には第三極、いや対極の力すらない。「諸派」といってもいいくらい無力で常に数で押し切られてしまっている。かつて昭和の時代には自民党と社会党という2大勢力があったが社会党はいつの間にか霧散してしまった。野党の力をなくさせたのは日本の国民だ。「決められる政治」とか何とかうまいことを言われて「確かな野党」を切り捨ててしまった。まんまと小選挙区制を導入されて自民党が負けないような体制まで作らせてしまった。あの時に第三極があったなら少しは違う道があったのではないかと思っている。しかし今の政治家に大志はない。天下国家より次の選挙に自分が当選することだけが大切なのだ。

しかし野党の責任も大きい。一時は自民党に愛想を尽かした国民が「民主党にやらせてみよう」と舵を切ったことがあった。しかし東日本大震災やその後の原発事故に見舞われた不運があったにせよ、明らかな対応のまずさや先を見通せない政権能力の未熟さが露呈して国民から見放されてしまった。沖縄の基地問題でも「私には腹案がある」などと言いながら腹の中は空っぽだった政治家を、体裁だけで総理大臣にしてしまった民主党の罪は重い。落とし所もないまま迷走を続けていたら誰からも信用されなくなるのは最初から分かっていたことだ。

第三極どころか独裁政権が突っ走る日本は、はたしてこの先どうなるのだろうか。

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