どうぞ食べてみて下さい

最近ではメーカーの販促費削減の影響かめっきり少なくなったが、スーパーやデパ地下に行くと冷凍食品などの試食販売が行われていることがある。売る側から見れば一口でも食べさせてしまえば美味しかろうが好みでなかろうがお客に「貰って食べてしまった」という恩を売って商品の売上を少しでも増やそうという魂胆だが、このやり方はかなり効果のある方法だった。だった?そう一時は試食販売全盛時代が続いたがあまりにも多くなりすぎて消費者もあまりありがたいとも思わなくなり”恩を着せる”という効果があまり威力を発揮しなくなってしまった。”タダでくれるありがたみがないもの”に成り下がってしまったわけだ。もっとも試食はお腹を満たすものではない。

今でも「道の駅」や観光地のおみやげコーナーでは見かけることもあるが、衛生上、気にする客も多くなっているのか、さほど人気があるようにも見えない。もっとも道の駅やおみやげコーナーで売られているものは主に”お土産”として買っていく需要が多く、自宅で留守番している家族や自分で食べようと思うものならまだしも職場への形ばかりのお土産など、食べる人の好みも様々で統一のしようもないものであれば中身にはあまりこだわらない。観光地の名前がパッケージに印刷されていれば何でも構わないのだ。だからあえて自分が試食して確かめようとも思わない。

このような傾向はネット社会になって特に一般的になった。昭和の時代には”通信販売”といえば胡散臭いもので、お金を送っても品物を送ってこなかったり、注文したものと違うものが送られてくることも多分にあった。だから買い物する時はお店でよくよく現物を確かめてから買わなければいけないと言われていた。ところが日本でも20年ほど前からインターネットショッピングが普及し始めると様相は一変した。特に従来から書籍などは書店に行ってもベストセラーや雑誌以外には欲しい本が見つかることは稀だった。それならばネットで検索してクレジットカードで購入するほうが手間も時間も圧倒的に短縮できるのだ。ボクも今では書籍や生活小物から家電製品に至るまで多くのものをネットショッピングで買っている。さすがに靴は実際に履いてみないと何ともいえないのでお店に出向いているが、普段着る衣類などはネットで買っている。

しかしネット書店で本を買おうとすると多くの場合、ページをパラパラめくって目次を眺めることすらできない。タイトルと書評だけが頼りである。中には買ってから「しくじったな」と思う本もないわけではないが、いずれにしても書店で注文して取り寄せてしまったら結局は買うことになるのだから、必要経費だと思って諦めることにしている。中にはネットでも「なか見!検索」などと称して本の一部を立ち読みできるようにしたものも出ているがほとんどの書籍には対応していない。立ち読みはリアルな書店で本を選ぶときの大きな利点であることに間違いはないのに書店では「あなたにお薦めする本を勝手に選んで配送します」という「中身を知らないから楽しめる」という方向に舵を切っているところもあるほどだ。ボクは自分の読む本を他人に選んでもらおうとは今のところ思っていない。まったく違う人生を歩いてきた人の選ぶ本はまずボクの感性には合わない。送られてきた本の最初の数ページを読んだだけでその先を読み続けようという意欲すらなくなるのだ。

だからボクが本を選ぶのは、誰か本を書いている人が中身の一部を紹介しながら書評をして紹介しているものが多くなっている。その人が書いた本を読めばその人の価値観がある程度わかるし、その人が薦める本ならば読む価値があるだろうと思うからだ。

新しい食べ物が発売されるたびに「試食もさせないで食べ物が売れるか!」とちょっと思っている。安いものならダメ元で試しに買ってみることもあるが高価なものだと”ダメ元”という気分にはならない。最近ではそれでも呆れるほど高価なものをネットでお取り寄せして買う人が多いのだという。つまり味なんてどうでもいいのである。誰かが「美味い!」と言ったなら自分も美味しいと思う人達なのだ。自分で判断することを最初から放棄している。幸せな人達だなと思う。

それならいい加減で無責任な売り文句でも簡単に売れるに違いない。それでもあっという間に売れなくなってしまうのは、自分で判断できない人にとってもダメなものだったからに違いない。商売でいちばん大切なことは「誠実である」ということだ。これは昔から変わらない。

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