マニュアルに書いてないこと

ファストフードやファミレスに行くとテーブルの上にペーパーナプキンが置いてあることがある。大抵はステンレス製のボックスに多量のペーパーが差し込んであってお客は自由に自分の必要な分だけ取り出せるようになっているアレである。店員がマメで頻繁にテーブルを見て廻っている店ではペーパーはいつも満タンに補充されているがいい加減な店では切れてなくなっていることもある。ある意味でトイレのペーパーのようなものだ。

ペーパーが頻繁に補充されていっぱい入っているのを見るのは気持ちいいものだが時に不便を感じることはないだろうか。そう、ペーパーを1枚だけ取り出そうとしているのに満タンに補充されたペーパーはお互いの摩擦力でスッと滑ることなく取り出しにくいことがある。力を入れて取り出そうとしてペーパーが千切れてしまうこともあれば一度に何枚もゴソッと出てきてしまうこともある。1枚で十分にことは足りるのに5枚も6枚も出てきてしまうともはや元のボックスに戻すこともできず「もったいないなぁ」と思って罪悪感すら感じる。

おそらく店のマニュアルの「紙ナプキンの補充」の項目には「補充する際には満タンにすること」などと書かれているのだろう。それを見たアルバイト君たちは”指示通りに”ペーパーを「これでもか!」というほどギュウギュウに詰め込む。どうせ補充するなら一度にたくさん詰め込んだ方が補充の間隔が長くなって”効率的”だと思っているのかもしれない。いや店長の指示で「補充するときは目一杯入れろ」と言われているのかもしれない。

しかしギュウギュウに詰め込まれたペーパーはお客の意にもアルバイト君の意にも反してごそっと多量に取り出されてしまう。お客はかすかな罪悪感を感じ、アルバイト君のせっかく効率的だと思った工夫も水泡に帰すのだ。これはお互いにとって不幸なことだが仕方がない。いかんせん”マニュアルで決められている”のだから。もっともマニュアルにだって「取り出しにくくなるほどギュウギュウに詰め込め」とは書いてないだろう。店舗やアルバイト君たちの現実を知らない本部のマニュアル制作担当者はそんなことにすら気づいていないはずだ。

以前、チェーンストアの店舗で働いていた頃にもすべての店には本部が制作した数百ページものマニュアルが置かれていた。マニュアルは修正や変更があるたびに頻繁に更新された。しかしその内容は店舗での実作業に関する部分は基本的なことしか書かれていない。各店舗ごとに店長の采配でいろいろな工夫ができるようにユルくなっているのだ。

だからそれを読んだ人によって若干の解釈の違いが出る。先ほどのペーパーナプキンの詰め方一つにしてもだ。どちらが正しいという話ではない。どうすればお互いが幸せかということだ。若干の余裕を持って補充しておけばお客は取り出しやすく、1枚ずつペーパーが取り出せれば無駄になることもなく補充の回数だって逆に少なくできるかもしれない。店舗の運営から見ても無駄がなくなり経費の削減にもつながる。これを「三方良し」という。

マニュアルに書いてあることは基本的にマニュアル通りに作業しなければならない。いやそれに不都合があるなら正式な手順を踏んで早急にマニュアルを修正しなければならない。しかしマニュアルに書いてないことは自分で考えることも必要だ。どうすれば一番ベターなことなのか、作業する側の立場だけでなく自らが使う側の立場になって実際に使ってみてどう感じるかを考えてみることだ。きっとそこから何かが始まるに違いない。

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