さらばテレビジョン

地デジテレビに買い替えてから(ってずっと前の話だが)画面で番組表が手軽に見られるようになった。昭和の頃は「何かやってないかなぁ~」とチャンネルのつまみをガチャガチャやっては親に怒られたものだが便利な世の中になった。便利な世の中にはなったが今度は見たいような番組がサッパリないことにも気付いた。どこのチャンネルでも同じようなバラエティやスポーツ中継(主に野球とかゴルフ、競馬)ばかりで見る気にならない。たまに民放の情報番組など見てみると半分以上はコマーシャルでそれも同じようなものばかりが繰り返される。10分ほど見続けてもコマーシャル以外は全く流れないなんてこともザラだ。

特に週末の土日や祭日はこの傾向が顕著だ。彼らは何を考えて番組を作っているのだろうと品位や人格を疑うような番組構成である。しばらく前にAmazonプライムの無料ビデオ視聴機器を当時の特価(2,000円くらい)で買ってみたがこれと言って見たい映画やドラマもないので最近ではさっぱりご無沙汰している。もっともドラマは普段からほとんど見る習慣がないので興味も湧かない。

テレビ番組に限らず世間ではみんなが同じものを作って追いかけている。買う方も見る方も同じような代わり映えのしないものを繰り返し見たり買ったりしている。関西地方ではいざしらず東京近郊では喫茶店(死語?)もレストランも客はチェーン店ばかりに集中する。値段もメニューも店に入る前からわかっているから安心なのだという。

一方の関西ではまだまだ個人経営の店が数多く残っている。仕事で得意先に行くときも喫茶店で時間調整をすることがあるが、そんなときに大阪人はチェーン店など探さない。近くにある良さそうな店を独特の嗅覚で探す。もちろん外れるときもあるが、大阪では安くてうまい店でないとすぐに潰れてしまうので淘汰が活発で駄目な店が少ないという事情があるのかもしれない。

自分が知らないことや未経験のこと、いつもと違うことをやるのはちょっと怖いし小さな勇気も必要だ。どうせなら既によく知っていることをやったほうが安心だ。マーケティングの世界ではブランド戦略などがこれに当たる。逆にいつもと違うことをしようとした時には「もし変な店だったら嫌だな」とか「自分だけ違うことをやって失敗したらどうしよう」と思うからモチベーションは後ろ向きになる。マイナスの思考だ。失敗するくらいならそこそこの結果を残したほうがいいだろうと思う。「大過なく…」の思想だ。

しかしいつもと同じことをすれば得られる結果もいつもと同じだ。失敗しない代わりにそれ以上の満足もない。新しいことを始めようとしたときにリーダーはメンバーの顔を見ながら言う。「なにか新しいものはないのか」「何でもいいから意見を出して欲しい」と。”ブレーンストーミング”と言われるそのミーティングでは守るべきこんなルールがある。

”他の意見を否定するような意見は言わない”
”できるかどうかを考えずにどんなことでも自由に言う”

しかしミーティングの最後になるとそれまで黙っていた”中間管理職”が意見を取りまとめようとして哀しい習性を発揮する。

「どこか他にやってるところはあるのか?」

せっかくのミーティングもこれで全てオジャンだ。どうせなら最後まで黙っていてくれたほうがまだせっかくの時間が無駄にならずにすんだものを。そこには、誰もやっていないからオレたちがやろうという気概がまったく感じられない。

テレビ番組のバラエティを見ているとどこの局(制作会社)でも価値観は驚くほど同じだ。

・牛肉は霜降りのA5和牛だけが一番で赤身肉はダメ
・お金持ちのセレブはみんなが必ず憧れる
・高いもの、希少なものは必ず美味しい
・車はヨーロッパのスポーツカーが一番いい、などなど

どこの局でも価値観はすべて同じである。しかしこれだけ多くの人間がいるのにみんなの価値観がすべて同じだなんてことはありえない。つまり悪い言い方をすれば大衆の情報を操作しているのと同じことだ。特にテレビのように影響力の大きなメディアが主張することは大衆に受け入れられやすい。すると多くの人は霜降りの和牛だけをありがたがり、キャビアやフォアグラは誰が食べても美味しいんだと思い込み、おカネさえあれば幸せになれると思い込み、金持ちになったらベンツやフェラーリが欲しくなる。

しかし誰もが自家用ジェットに乗って世界中を飛び回ることが必ずしも幸せになることなんだろうか。田舎に住んでも東京にいても一介のサラリーマンとして平凡に暮らしていくことが幸せだと思う人もいる。世界中をバックパックひとつ背負って見て回ることに生きがいを感じる人もいる。家業を継いで家族全員が健康でいられることが一番だという人がいる。

誰もが贅沢で無駄だらけの暮らしをして浪費することが一番だと思っていたあのバブル時代の価値観から未だに抜け出せないでいるテレビジョンに、果たして未来はあるのだろうか。

明石家さんまさんは昔、キッコーマンのコマーシャルで歌っていた。

♪幸せ~ってなんだっけ?なんだっけ?♪

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