どうして乾杯はビールなのか

最近では減っているというが昭和や平成の初期にはまだまだ職場の飲み会が多かった。まだサービス残業が全盛の時代だったので飲み会の日は若手社員も夜8時過ぎに早上がりをして飲み屋に向かった。昭和60年代頃から関東の飲み屋はチェーン店が全盛になり店員も「いらっしゃいませぇ~!「「はい、喜んでぇ~!」のノリだった。全員が集まるとまずは乾杯だ。当時は”お酒が飲めない”などという言い訳は全く通用せず、好きな人も嫌いな人も全く飲めない人も等しくお酒で乾杯する習わしだった。今にして思えばずいぶんと非人道的だった。

乾杯は”ビール”と決まっていた。個人的な好き嫌いなど関係ない。乾杯といえばビール以外には考えられなかった。黙っていても全員にビールが配られて自然発生的に「乾杯~!」となった。ボクは当時からビールがあまり好きではなかったが”乾杯”だけは文句を言わずにビールを飲んでいた。ビールはすぐに腹が膨れるばかりでなくトイレも近くなり面倒くさかった。その上、ボクの体質なのかビールを飲むとあっという間にしこたま酔っ払った。もちろんアルコール分は少ないので酔いが覚めるのも早いのだがあんまり気分のいいものではない。それは今でも変わらない。

最近では”乾杯=ビール”という常識も薄れてきたので最初からワインやサワーにすることも多いが、全体的に周りを見回してみると「乾杯はビール」派はまだまだ主流だ。

昭和の頃の居酒屋では酎ハイといえば焼酎の炭酸割りだった。ホッピーなどもあったがボクはビール味の焼酎もあまり好きではなかったので頼むことはほとんどなかった。ワインなど置いている店はなく酒は日本酒かビール、焼酎割りくらいしかなかった。選択肢も少なかったので”乾杯”といえばビール瓶の栓を抜けばすぐに飲めるビールが重宝されたのだろう。今でもホテルの宴会場で行われる宴席の乾杯はほとんどがビールだ。ホテルのボーイが乾杯のグラスに注いで回ると時間がかかるので出席者に自分で注いでもらうわけだ。乾杯の挨拶が終わったタイミングですぐに乾杯するにはビールが最適だ。

そんなこんなで古い年配のオヤジの多くがビール好きだったから「乾杯はビールでいいですか?」と言われれば誰もが「異議なし!」だった。今では居酒屋に行ってもメニューの選択肢が多い上に”お偉いさん”が勝手にビールを頼んだりするとパワハラだと言われかねない。しかし大人数が別のものを注文すれば店側の人的負担が大きくなって出てくるのが遅くなる。”乾杯”はタイミングが重要なのでそこでモタモタしないように参加者も気を遣って「じゃあオレも(ビール)」ということが多いのだと思われる。

実際に乾杯の注文を取る幹事さんなどは「ビール以外の人はいますか~?」などと言っているのをよく耳にする。新入社員歓迎会などでは新入社員が学生時代のノリでわがままを言い始めるので場を仕切るのが面倒だ。新入社員たちは歓迎会を”飲み会”だと思っているが先輩社員にしてみれば単なる職場行事なのだ。儀礼的なことはさっさと片付けてしまいたいと思っている。乾杯がビールだろうがサワーだろうがどうだっていいと思っている。酒を楽しもうなんてこれっぽっちも考えていない(人がほとんどだ)。

そもそも乾杯の時点から「何を飲もうか?」などと考えるのは面倒だ。個人的に飲みに行くのなら酒もメニューもある程度吟味して考えるが、集団的飲み会ではさっと飲んでパッと食べてさっさと帰りたいところである。そんな席で深い話ができるわけでもなく、運悪く酒癖の悪い上司にでも絡まれようものなら災難以外の何物でもない。そんな席では何も考えずに「オレも(ビール)」と言っておいたほうが面倒がなくてありがたいのだ。

だからみんな周りに流される生き方を選んでいるだけだ。

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