そんなことわかってる

オタクっぽい二人の若い男の子が相手の言うことに対していちいち「そんなことわかってる」と言い返し合うというCMがあった。残念ながら何のCMだったのかは忘れてしまった。相手にナメられたくないから「そんなことくらいお前に言われる前からオレは最初から知ってる(だからオレのほうが優れている)」と言いたかったのかどうかはわからないが、負けず嫌いはオタクの特性の一つだ。彼らは常に自分の知識をひけらかして他人をバカにしたような目で見る。しかしオタクとは元来そういうものだ。

そのCMの結末がどんな結論になったのかは覚えていないが妙に記憶に残るCMだった。
相手より自分を優位であるようにみせて自慢したりすることは心理学からみればごく普通の感情であり行為だ。だからうんちくを語り始める人間はいくらでもいるし鍋奉行もしかりだ。

最初は相手のことをバカにするような態度で「そんなことわかってる」と言い合っていた二人がふとしたきっかけで表情を変える。ふたりともが「わかっていなかった事実」を突然に突きつけられる。わかっていないけれど二人は「そんなことわかってる!」と言い続けながらこっそりと事実を知ろうともがき始める。そこでようやく「自分が何もわかっていなかった」ことに気づくというストーリーだ。

「知ったかぶり」
バカにされた時の言葉だ。よく知りもしないくせに偉そうに講釈する人は今も昔もたくさんいる。しかしちょっとしたことでその人達が喋っているデタラメも多くの人から信用されることがある。根拠や証拠はなくても論理の筋道が正しいときだ。その論理に根拠のないことが誰にもわからなければ人は素直に信じてしまうことがある。

コラーゲンをたっぷり食べれば肌がプルプルになる、とは誰もが「そうだよね~」と納得する説明の一つだ。ボクはお肌のケアのことはよく知らないが皮膚の下にたくさんコラーゲンがあるとお肌がしっとりと潤いを持つことができるらしい。「だからコラーゲンを摂りましょう」というのはあまりにも短絡的だ。風が吹く→桶がすっ飛ぶ→桶屋が儲かる的な発想と言わざるを得ない。食べ物から摂取されたコラーゲンは胃や腸で分子レベルにまで分解され吸収される。それはもはやコラーゲンではない。コラーゲンを作っていた分子だ。食べたコラーゲンがそのまま皮膚に行くわけではないことくらいはちょっと考えれば分かることだ。もっとも身体の中にコラーゲンの原料になる物質が増えればコラーゲンも作られやすくなる可能性はあるからまんざらウソとも言い切れないような気はする。しかし「朝起きたらお肌がプルプルになっていて…」「昨日食べたスッポンが…」というのはやっぱりやりすぎ感を禁じ得ない。

ほんの一部を聞きかじっただけですべてを知っているかのように振る舞う人たちは「他人が知らないことを自分だけは知っている」と思わせて称賛を浴びることに快楽を感じている。だから一度称賛を浴びてしまうとわからないことをわからないと言えない。知らないことを知らないと言えない。麻薬のようなものなのだ。

しかしそれが”知ったかぶり”だと周りの人にバレたときには一瞬で信用はなくなる。「今まで偉そうに講釈してたのは何だったわけ?」ということになる。それでも彼は意地になって「そんなことわかってる」と言い続けるのだ。

アンデルセンの「はだかの王様」の話は子供の頃に一度は聞いたことがあるだろう。他人の評価ばかりを気にして詐欺師に引っかかり、自分の目を信じられずにスッポンポンで街をパレードして赤っ恥をかく王様の話だ。恥をかくくらいならまだ傷は浅い。自分に見る目がないことがわかったときに一番傷つくのは他ならぬ自分だ。でもうまくいけば自分が生きている間にはその事に気づかずにこの世とお別れできるかも知れない。

知ったかぶりをする人は必ず手抜きをしている。物事を最後まで確かめることなく「まぁこんなもんでいいや」と勝手に結論を出して物事を途中で放り出す。いつもそんなことばかりしているから一向に真実にたどり着けない。最後まで自分がわかっていないことすらわかっていないのだ。だから人生も中途半端になる。

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