神通力をなくした『1980円』

「1,980円」もしくは「198円」、いや「19,800円」でもいい。少しでも商品を安く見せるために誰かが考え出したスペシャルなプライシングだ。支払うときに200円、2,000円、20,000円を出せばちょっとお釣りが戻ってくる。何ともお得感のある値付けだった。いや逆に値段に「98」が付いていないと「高い」という印象すら持ってしまうほど日本では浸透している。

ところが1989年に3%の消費税が導入されると様相は一変する。198円の品物を買おうと思ってレジで200円を出すと「あと39円です」と言われてしまうようになったのだ。導入当初は日本人の誰もが「消費税」というものに慣れていなかったため単純に「損する!」と思ってその場で買うのをやめる人も出るほどだった。それほどまでに最初の時点では小売店でのダメージは大きかった。そこで店では3%くらいなら店側で税金分を被って「税込み198円」とするお店が続出した。これで買い物客は200円を出してお釣りをもらうという安心感を再び手にしたのだった。

ところが消費税は徐々にその率を上げ、5%、8%に引き上げられた。ここまでくると小売店も「税金分は自分たちが損を出してでも…」などとは言っていられなくなった。さらに政府は「税金分を値引くのは禁止!」とまで言い始めた。

かつて値札の「1980円」は販売店にとっても消費者に「おっ、安い!」と思わせるための秘策だった。しかし今では値札が1,980円もレジで消費税を加算されると2,138円になり消費税が10%になれば2,178円になる。つまりは値札には(税別)と書いてあるだけでも2,200円近くを支払うことになる。「騙された!」という感覚は拭えないが「税金だからしょうがないよね」と思うほど日本人も消費税に慣れてきた。

まぁここでは消費税増税の是非について言及することは止めておく。しかし日常的に「また騙された!」と思うようになれば買う方だってだんだんと騙されないように気をつけるようになる。頭の中では常に消費税の計算をするようになり、ややこしい端数の計算に本来なら罪のない小売店への不信感まで芽生えさせることになる。

だからといって今の小売店が「税込価格」では表示しないだろう。他店と比べてぱっと見の値段が圧倒的に高く見えるからだ。だがどうせ払わなければいけない税金なら値札がどうあれ最終的な支払額を表示して欲しい。なぜ買う側に常にややこしい税金の計算を強いるのだろうと思う。これこそ「お客様本位」と一番かけ離れた「サービスの放棄」ではないだろうか。

もう98価格はやめにしないか。単に支払う金額の計算が面倒くさいだけだ。せっかく消費税が10%になるのならば200円のものには220円払えば良い。計算は簡単になる。198円のものには19.8円の消費税を加えるのだが1円未満は切り捨てることが多いので19円が消費税だ。198円に19円を足して217円が税込価格になる。220円なら最低で高価が2種類で4枚なのに217円になると3種類の硬貨が合計で6枚だ。それに財布の中から1円玉や5円玉を一生懸命に探してつまみ出している高齢者を見るたびに可哀想になる。目が悪くなると硬貨の区別はつきにくくなる。

もっともこれから日本もキャッシュレス時代になれば小銭の支払いが面倒だとは思わなくなるだろう。でもお釣りをもらわないのなら余計に98価格の意味もなくなるに違いない。2円値上げしてピッタリ価格にしてくれたほうが払う方もストレスがなくて快適だ。

いつまでも前例主義ばかりを踏襲して、良いと思うことでもすぐに「誰か他にやってるのか?」と問いただすような中間管理職ばかりがはびこる世の中では、いつになっても改革は難しい。

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