初物は美味しくないが役に立つ

■ 本マグロの初競り、寒ブリ、初鰹、初サンマ、ワインのボジョレー・ヌーボー。みんな初物が大好きです
今年はサンマが不漁らしくどこに行っても高いですね。そしてその多くは去年の冷凍モノなのだとか。テレビでは、それを嬉しそうに頬張って「美味しい~!やっぱり新鮮なものは違いますね!」なんて言っている人を映しています。そんな光景を見ると、嫌味でなく「なんだかんだ言っても日本人って幸せなんだなぁ」って思います。
他にも季節の食べ物ってたくさんありますよね。店先で秋の松茸や鮭、いくら、冬の越前蟹や寒ブリ、牡蠣などを見かけるようになると「今年もそろそろ終わりが近づいてきたな」という雰囲気と贅沢な気分になります。

■ 旬と季節外れではどちらの野菜が美味しいと思いますか?
ところで「旬」っていう言葉があります。食べ物などでいえば”一番脂が乗っている時”という感じでしょうか?
とりすの家の奥さんは、マグロでもブリでも脂の乗った一番人気の魚が嫌いなので(笑)、いつも割とパサパサした感じの物が多いんです。例えば初鰹だったり肉やマグロなら赤身がほとんどで、マグロの大トロやサシの入った国産牛肉が食卓に乗ることはまずありません。ですから我が家のエンゲル係数はかなり低めだと思います(笑)
それはそれとして、一般にはマグロやブリでも脂の乗ったものが人気で高値も付いています。これは美味しいかどうか(好きかどうか)は別として、希少で人気があって誰もが欲しがるので値段も高いのでしょう。ニュースなどで年末の築地や上野・アメ横などの風景を伝えているのを観ると天邪鬼なとりすは「ホントに全員が大トロや寒ブリを好きなのかなぁ?」と勘ぐってしまいます。だってうちの奥さんはそういう脂の乗った(高価な)ものが嫌いなんですよ(笑) 中にはあんまり好きじゃないけど「皆んなが好きって言ってるんだから自分も好きだって言っておかなくちゃ」とか「あまり好きじゃないけど、数が少なくてなかなか手に入らないんだから、今食べておかなきゃ損!」って人もいるんじゃないかなって思ったりします。それに大トロや寒ブリは別としても、今ではトマトやナス、キュウリなどもハウス栽培で年中食べられますが、やっぱり夏の旬になると安くて美味しいものがたくさん出回りますよね。それなのにメロンやスイカなども出始めの高い時期に大して美味しくないものを(失礼!)高い値段で買っていく人がたくさんいるわけです。

■ 人はなぜ数の少ないものを欲しがるのでしょうか?
人には生まれついて持っている8つのの習性があります。それは例えば、

 1.生き残り、人生を楽しみ、長生きしたい
 2.食べ物、飲み物を味わいたい(いつもお腹を満たしていたい)
 3.恐怖、痛み、危険を免れたい
 4.性的に交わりたい(子孫を残したい)
 5.快適に暮らしたい(面倒くさいことをしたくない)
 6.他人に優り、世の中に遅れを取りたくない(他の人に負けたくない)
 7.愛する人を気遣い、守りたい
 8.社会的に認められたい

というものがあります。他にも

 ・情報が欲しい
 ・好奇心を満たしたい(噂話をしたいなど)
 ・・・・

などがありますが、先ほどの8つの欲求ほどは強くありません。最初にお話した「初物」や「手に入れにくい物」のように希少性が高いものを人が欲しがるのもこの辺りの強い欲求に関係しています。6.の「他人に負けたくない」や8.の「社会的に認められたい」感情が「他の人は手に入れることのできない希少なものを所有すること」で
「自分が強い、優れた人間だ」ということを見せることで欲求を満たしてくれるわけです。(もちろん本当に好きな人だってたくさんいると思いますよ!)
多くの人がつい「限定品」に手を出してしまうのはこういった生まれつきの誰もが持っている人間の習性を利用したものなのです。

■ 人の持つ基本的な習性は変えられません
この習性は人のDNAの中に刷り込まれたものなので、程度の差こそあれ誰もが持っている感情です。販売の現場でもこの習性を利用した売り方はどこでも見られます。いわく「今だけ!」「20個限定!」「今回限り!」。でもやりすぎれば信用を失います。とりすの家の近くでも「閉店売りつくしセール」を5年間も続けていた洋品店がありました。売りつくしのはずなのに途中で新しい商品が入荷したりすると誰からも見限られてしまい、最後はもう誰も近寄らなくなってしまいました。
それでもこの習性は誰もが持っているものですから、これからも脈々を受け継がれていくのでしょう。

■ 明日のあなたは何を欲しがるのでしょう
そういうやり方は、散々に手垢が付いて使い古された手ですが、未だにあちこちで見られる売り方なのでおそらく効果はあるのでしょう。しかし近頃ではそれぞれの人の価値観の多様化が良しとされて「皆んなが同じ」なのは没個性だと言われるようになりました。皆んなが”右へ倣え”してグループ化していくことを否定的に捉える向きもあります。(うちの奥さんの場合はただの好き嫌いです)
そんな話を聞く前と後では、あなたの欲しいものは変わりましたか? 世間の流行に流されて欲しくもない”限定もの”を買うのか、自分が本当に欲しいものなのかをよく考えて買うものを選ぶのか? それでもとりすはやっぱり”限定もの”にもちょっとは惹かれちゃうんですよね。これこそ俗人の悲しい性です(笑)

■ 初物は美味しくないが役に立つ
「日本初上陸!」「業界初!」「初入荷!」
目を惹くキャッチコピーが街中にあふれています。それほどに「希少性」を全面に出して購買意欲を刺激するのは強力なんですね。この方法が未だに猛威をふるっているということは、それだけ効果の高い方法なんです。
実は”初物”には、大抵の場合、ほとんど実質的な優位性はないのですが、その使い方によっては集客に大きなメリットを出せることがあります。
初物は美味しくないが役に立つのです。あなたのビジネスの周りにも、そんなものが隠れていたりしませんか?