値段が高くなるほど売れるものがあるんです

■ 学生の頃、モノは安いほど売れるって学校で習いましたよね?
社会の授業でやった経済学者アダム・スミスの「国富論」に出てくる「神の見えざる手」って覚えていませんか? おにぎりを1つ200円で売ってみたところ高いので全然売れません。そこで150円に値下げをしたところ1日に20個売れるようになりました。これだけ売れるのなら170円に値上げして儲けを増やそうとしたら今度は5個しか売れなくなってしまいました、というような「消費者の需要は値段に反比例する(値段を下げればたくさん売れる)」というお話です。

とりすも経済学を勉強して初めて知ったのですが、経済学って数学や物理学のような自然科学とは違っていて、実際に社会で起こっている現象に理屈をつけて説明してみようっていう学問なんですね。ですから物理に出てくるニュートンの「運動の法則」のように公式に当てはめれば必ず答えが出るようなものではないんだそうです。つまり経済学の法則は世の中で起こっているすべての経済活動を説明できるわけではないということなんですね。

■ 所得が増えれば食べるものが変わったりしませんか?
これはそれぞれの消費者の収入、つまり懐具合によっても買うものの志向が変わってくるということにもなります。
たとえば、ある大学生がアルバイトをしてお小遣いを稼いでいた頃、お昼はいつも280円(今はもっと高くなりましたが)の吉野家の牛丼でした。やがて学校を卒業して仕事につき給料を貰うようになると、学生の頃は毎日食べていた吉野家の牛丼を食べることは少なくなり職場の近くの居酒屋で日替わりランチを食べることが多くなりました。隣に吉野家があったとしても、です。
5年ほど経つと彼は職場での実績を認められて係長になりました。給料も少し増えました。すると彼のランチにも変化が見られます。週に1度は「いきなりステーキ」に行って少しばかりの贅沢を楽しむようになります。つまり学生時代の彼は、吉野家の牛丼が大好きで毎日食べていたわけではないんですね。本人の気持ちの中では

牛丼 < 日替わりランチ < ステーキ

だったわけです。もちろんこの先、もっと給料が増えればお寿司や鰻が食べたくなることだってあるかもしれません。
これは彼が出世して給料が増えたことだけが原因になるとは限りません。景気が良くなって消費者の所得が全体的に増えると、今までは安くて粗悪なものが一番売れていたのに、今度は高価でも品質の良いものが売れるようになったりするわけです。
こういった”安いが粗悪なもの”を「劣等財」、”高くても品質の良いもの”を「正常財」などと言ったりして経済学では景気などによって需要が変わるのだという理論もあります。先ほどの彼のランチでいえば、牛丼=劣等財、ステーキ=正常財、だったわけです。何でも安ければたくさん売れるというわけではないのは、私たちの日常生活の中でも実感できることですよね。予期しなかった収入があればお寿司が回らなくなったりしますもんね(笑)

■ ターゲットにするお客様の特性を絞り込んでいますか?
お客様の特性によって買うものが変わってくるとすれば、商品やメニューの開発、品揃えも変えていかなければいけなくなります。いや、いけなくはありませんがお客様からどう見られているのかを考える必要が出てきます。学生のお客様には牛丼を、若いサラリーマンには定食を、年配のお客様にはうな重を、と全部揃えればすべてをカバーできますが、資金効率を考えるとそうも行かない場合が多いですよね。
そして経済学とは別の問題ですが、人にはみんな「専門家が好き」という特性もあります。かつて一世を風靡したファミレス(何でもメニューにある)が、家族の形や習慣の変化から一気に衰退していった実例も大切な教訓になります。総花的にすべての人をターゲットにしたい気持ちは痛いほどわかりますが、お客様を絞り込んだほうが効果は何倍にも上がります。

■ 自分に差別化できるものがなかったとしたら?
ここで気になるのが「自分を差別化できる強み」ですよね? USP(ユニーク・セリング・ポイント)なんて言い方をしたりしますが、要するに他にはない自分だけのセールスポイントです。でも普通は自分だけが圧倒的な強みを持っているなんてことは、まずありません。そうするとほとんどの経営者やセールスマンは「値引き」に走ってしまいます。安ければ売れるんだと思い込んでいますから。でも先にもお話したように”安くすれば売れる”ものばかりではなかったですよね。逆に価格競争をして値引きだけに走ってしまえば”高額でも品質の良いもの”を求めるお客様が離れてしまい、”安かろう悪かろう”を求めるお客様ばかりになってしまうかもしれません。あなたの商品を「劣等財」にしてしまう危険すらあるわけです。
上得意になるべきお客様を遠ざけてしまい、安物目当ての値引きばかりを要求してくるお客様ばかりが集まってしまうのではつまらなくないですか? それを避けるためにもターゲットにするお客様を絞っていくという方法が優れているわけです。少数の客層に絞って「そう!あなたのための商品です!」と語りかけることで”正に自分が求めている優れた商品”だ、と感じていただくことができれば、それがあなたのUSPになります。あなただけがそのお客様のための商品を持っているのですから…。