お客様が信じているものを知っていますか?

■ 洗濯機は日立製に限る?!
「信念」とは何でしょうか? 辞書をひくと「正しいと信じる自分の考え」と書いてありました。今、この記事を読んでいるあなたの頭の中にも色々なことについての信念が詰まっていることと思います。例えば

「冬になったらインフルエンザの予防接種は必ず受けた方がいいに決まっている」とか
「痛風にはプリン体が悪いので魚卵やビールはやめたほうがいい」とか
「テレビやオーディオ機器はパナソニックよりSONYのほうが性能がいい」とか
「9月になったら夏は終わりなので海水浴に行くなんてナンセンスだ」とか…

そんな個人的な思い込みの10や20はすぐに思いつくと思います。とりすも昔から「日立は元来モーターの会社だから洗濯機や掃除機は日立に限る!」なんて思っていたりします。今となっては何の根拠もないんですけどね。でも他の人に訊かれたら「アラシのファンだから…」なんて言いながら家の洗濯機も掃除機を日立です(笑)

■ 人の持つ信念はものすごく強いのです
それぞれの人の持っている”信念”というものは、実はあまり根拠がなくてもものすごく強いんです。先ほどのとりすの「洗濯機は日立」という”信念”だって「昔、日立はモーターの会社だったから」というものでした。そんなのは日立製作所が創業した時の話で、今となっては日立のモーターがずば抜けているなんてことはないでしょう。パナソニックだって東芝だって、性能はどんぐりの背比べだと思われます。つまり大した根拠がなくても最初にそのように思い込んでしまうと”自分の考えは正しい!”と強く思ってしまうんですね。
とりすは以前勤めていた会社で、業務改善やマーケティングのコンサルタントを長年やってきましたが、その時も最初にお会いするお客様によっては「コンサルタントなんて大した成果も出ないことを、テキトーに勝手なことを言ってお金をフンダクッていく詐欺師だ」みたいな警戒心がアリアリで、自分のことを信じてもらうまでにはいつも苦労をしていたことを思い出します。これはどこかの誰かから「コンサルタントなんて信用できない人種だ」なんていうことを吹き込まれていたのだと思います。ただこれは、それぞれの人が”事実”だと強く信じていることですから「私は違うんです」と言っても仕方ありません。そりゃ悪者だと思っている相手に「私は悪者ではありません」と言われたって誰が信用するものですか(笑)

■ 人の信念を変えていく方法は?
このように信念は根拠が弱いくせに非常に強力です。これを覆していくにはどうしたらいいのでしょう? 先程もお話しましたが”信念”というものは根拠が曖昧だったりいい加減だったりすることが多いんです。「いくらや数の子を食べると痛風になる」なんてテレビの健康番組で小耳に挟むと次の日から全く口にしない人もいるそうです。
その話にどれくらいの合理性があるのかが分からなくてもです。だから、もっと偉そうな学会の偉い先生がテレビに出てきて「実はアレはあまり根拠がないんですよ」なんて吹き込まれると「えーっ、そうなのー!あんなに我慢してたのに」なんてことになってあっさりと宗旨変えをしてしまうこともあります。
ここで大切なのは”証拠”なんです。そりゃそうですよね。最初に信じ込んでいた”信念”以上の証拠を見せられれば”信念”だって揺らぎます。「近所で噂になってる」よりは「学会で偉い先生が論文を出している」方が信用できるじゃないですか。「昔、誰かに聞いたことがある」よりは「病院の先生が言っていた」方が確かな感じはしますよね? ”信念”ってものすごく強い割に意外と脆いんです。

■ 相手に寄り添う
だからといって今まで相手が深く信じていたことを頭から否定して「それは間違いです!」と言ったらどうなります? 相手は「自分の信念は正しい」と強く信じていますから、おそらくその後はこちらの話を聞いてくれなくなると思います。それは感情的なものですからほとんどの人はそうでしょう。ではどうしましょう?
まずは相手が信じていることを肯定して「○○さんは~がお好きなんですよね?私も好きなんです」と話して「自分は○○さんの味方です」と思ってもらわなければいけません。まずは相手を肯定することでこちらの話を気持ちよく聞いてもらわなくてはいけませんものね。そしていくつか例を挙げて「こういう時もあんな時も、私もそうしてきました」というように相手に寄り添う気持ちで話しかけます。”私たち”は味方同士であって、あなたを騙してお金をだまし取ろうとしている人間ではないのだということを感じてもらうのです。その上で「でも最近知ったことなのですがもっと違ったやり方をしてうまくいっている人の話を聞いたんです」というYes&Butのやり方です。そこからは確かな証拠をいくつか挙げてその”違ったやり方”にはもっと強い根拠があることを知ってもらうわけです。
「自分の味方が言っていることなら少しは信用できるかも」と思ってもらえるはずです。もちろんウソや不誠実はダメですよ。相手からの信用を失うだけでなく、社会的に信用をなくしちゃいますからね。

■ 相手を説得するということ
「相手をたちどころに説得できる秘密の方法」みたいなハウツー本も書店のビジネスコーナーで目にすることがあります。お客様と商談をしていても、自分が”強力な証拠”を持っていると畳み掛けるようにしてお客様を説き伏せようとする営業マンを目にすることもあります。それは自動車ディーラーに行っても、家電量販店に行ってもよく目にする光景です。あなたも一度や二度はそんな場面で「弱ったなぁ」と感じたことがあるかもしれません。そんな時、自分の心の中では、営業マンの言っていることを全く信用していなかったりしたことはありませんか? 相手が自分の立場を理解して味方だと思う前に営業トークの集中砲火を浴びせてくるわけです。
自分も今までは○○さんと同じように思ってそのように行動してきたけど、どうやらもっといいやり方があるんです
、というアプローチは自分か思い込んでいるけれども”今まで知らなかったもっといい方法”があるのかもしれないと興味をもって聞く体制になるはずです。ところが営業現場でも販売現場でも「メリットをお客様に伝えきれていないのは気合が足りないからだ」なんということを未だにやっている企業がほとんどです。相手に分かってもらうということはお客様が自分で納得して決断することであって、営業トークを使って力ずくで説得して買わせることではない、ということがもう少し営業現場で理解されるようになるとお互いにとって”素晴らしい商品”を”気持ちよく”手にすることのできる、そして”いい商品”を”喜んで買って”もらって”感謝される”という楽しい営業が実現すると思っているんですが、あなたはどう思いますか?