隠すから事態は悪化する

アセスメントという言葉がある。現状の想定される利用者や関係者(自然環境なども含む)の実態調査をして、プロジェクトを実施した時にどのような問題や課題があるかを把握しておくことだ。
大きな国家プロジェクトや地方自治体の行う工事はもちろんのこと民間企業の工場建設や増改築、ビル建設などでも近隣住民に与える影響を勘案してアセスメントを実施する。

沖縄は常に水不足だ。特に離島ではちょっと雨が少ないだけで給水制限や断水になる。20年ばかり夏になると沖縄の離島を訪れているが、水がふんだんにあったという記憶はない。いや仮にふんだんにあったとしてもみんながジャンジャン使えば小さな島の水瓶はすぐに干上がってしまう。

沖縄県はそんな状況を改善するために島に海水の淡水化施設を作ったり浄水場の効率化や性能の向上を行ってきた。そして今度新しい浄水場を建設するために決めた場所は島の重要な観光資源でもあるビーチのキャンプ場だったのだという。住民に対する説明会が行われた時には既に場所は決定していたわけだ。島の住民は「なぜそこなの?」と声を上げても行政は「島の中には他に適当な土地がない」と説明したという。

実は他にも建設に適当な土地はあったらしい。しかし地権者が複数いて土地の取得が難しいというのだ。その点、今の候補地は地権者が1人だけなので土地の取得が簡単に行えるのだという。

言うまでもなく沖縄県にとって観光は重要な産業だ。中でも海は最大の観光資源でありそれに頼って生活している県民は多い。なのにここでも金の卵を産むガチョウの腹を割こうとしている。いや、この問題に関しては島の上水道の整備事業でもあるので観光客はもちろんのこと島に住む住民の生活にも大きく寄与する。だから住民たちも反対しているわけではない。でも「なぜそこなの?」と言っているだけだ。

今、島の住民たちは最適と思われる場所の地権者を一人一人探し出し協力に前向きな回答を得ているという。
それもこれも構想段階から行政が住民や関係者に情報を公開して話し合っていればお互いにとってWin-Winの結論をもっと早く導けたのではないかということだ。何でもかんでも「愚民たちに計画が漏れれば厄介なことになる」というお役人たちの驕りが事態を悪くする。何でもかんでも隠すからお互いに協力的な体制が築けなくなる。

利用者や関係者はいつも最後まで蚊帳の外だ。今回の件がそうだとは言わないが多くの公共事業でお役人は「全部やっておいてやったからこれでいいだろ!」的な態度がミエミエだ。

アセスメントは計画する前にあらかじめやっておくものだ。お役所のアセスメントは計画が出来上がった後で仕方なくやっつけ仕事で付け加えている。だから肝心な問題に焦点が当たらず計画自体もトンチンカンなものが出来上がる。計画ありきでアセスメントを作文する。問題が起きても「計画は全て出来上がっている」から変更しようともしない。変更するのが面倒なのだ。またお役所内で細かい根回しをしなければいけなくなる。

だからこそやるべき順番は慎重に考えなければいけない。一度議論して決まったことをご破算にしてやり直すことは無駄だ。これをシステム業界では”手戻り”と呼んで非効率の最たるものと考えている。
最初から利用者や関係者の意見を聞いていればそもそもの計画は全く異なった形になったかもしれないのに、お役人はダメな計画をゴリ押ししようとする。非効率でやる意味すらないプロジェクトにこだわって無理強いしようとする。そんな公共事業が日本中にあふれている。

ほとんどの役人は、最初から話し合っていい物を作ろうなんて思っていない。つつがなく大過なく終わらせることが公務員が一番大切にしていることだ。そのためには「どっちがいいか」でも「何が最適なのか」でも「どうしたら効率よく」でも「みんなが幸せになるために」でもなく「どうすれば問題なく終われるのか」しか考えない。

経済学ではライバルがいなくて向上心もないためにいつまで経っても状況が良くならない独占状態をX(エックス)非効率という。X非効率の典型例に出されるのはいつもお役所仕事と公務員である。

もう一度言うが、アセスメントは構想段階で利用者や関係者を交えて意見を出し合うもので、計画した後にお役人だけでやるものではない。

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