この道はいつか来た道

かつて日本の工業製品は欧米人に「猿まね」と言われてバカにされていた。日本人も”国産品”をバカにしていた。舶来品がいいもので国産はダメだというのが常識だった。東洋のイエローモンキーは欧米のまねばかりしてえげつない商売をするといって日本人も軽蔑されていた。日本人は欧米コンプレックスの塊だった。
いつのまにか”日本製”は作りが丁寧で品質が高く、アメリカ製品を含む外国製は使い勝手が悪く、特に中国製はすぐ壊れる上に爆発する危険もあると言われて敬遠されるようになった。唯一ドイツ製の自動車だけは未だに高級品としてその地位を保ち続けているが、海外のセレブたちの多くはレクサスに乗っている。

”Japan as Number one”と言われたのはいつの頃だったろうか。アメリカで同名の本が出版され多くの人が「とうとう日本は欧米に認められた!」と日本中が狂喜乱舞していたことを覚えている。
最初は「日本製だってそんなに悪くなくなってきた」と日本人が背伸びしながら言っていたのがいつの間にか”MADE IN JAPAN”がブランドになった。
車やオートバイ、家電、オーディオなど日本のブランドが世界を席巻し始めた。ニューヨークのタイムズスクエアには東芝やソニー、パナソニックの巨大な看板が掲げられ、ハリウッド映画やドラマに出てくる俳優たちは”Walkman”を身に着けて登場し、リビングに置かれているテレビは必ず”SONY”製だった。

あれから40年、タイムズスクエアの看板は”SAMSUNG”にかけ替えられ、ドラマに出てくるテレビやスマホも韓国製に替わった。

ところが今の日本人は中国製品や韓国製品を「猿まね」と言ってバカにしている。しかし実際に使ってみれば、もちろん日本独特の国内事情には対応しきれていない部分はあるものの、全体的にはグローバル基準に則って使い勝手のいい優れた製品がとても多いことに気づく。
それには欧米や日本の優れた技術をコピーして進化させていった面ももちろんある。しかし日本も高度成長期には欧米の特許を法律スレスレで盗んできた歴史がある。今の韓国や中国のやり方には日本人から見れば胡散臭くて汚いやり方に見えるかも知れないが40~50年前には同じことを日本人もやって来たのだ。

その結果、対日貿易赤字が巨額になりアメリカから猛烈な経済制裁も受けた。対米輸出品には巨額の関税がかけられて輸出は落ち込んだ。それでもあの頃の日本製品はさらなる高性能化と顧客サービス、低価格化を追求してアメリカに打ち勝った。

昨今はや中国人や韓国人旅行者が日本にやってきて家電製品や日用品を爆買いする姿が見られる。数年前に比べればその勢いは落ち着きを見せてきたようにも見えるが、日本の有名な観光地はどこに行っても中国人や韓国人で溢れかえっている。先日訪れた奈良では、8割ほどの中国人と韓国人、1割ほどの欧米人に1割ほどの日本人修学旅行生で、修学旅行生以外の日本人観光客の姿はほとんど見られなかった。かつて日本人の海外旅行が自由化された時、欧米人はフランスのパリでブランド品を買い漁る日本人を”ノーキョーサン”と呼んでバカにしていた。ノーキョーは”農協”のことで、自分の家の田畑を売ったお金で海外旅行に行ってブランド品を買い漁る悪名高き「農協ツアー」が全盛だったのだ。この姿こそ今の中国人や韓国人旅行者に似てはいないか。

最近の中国や韓国の製品は猿まね以上に進化してきた。日本独自の”ガラパゴス”と言われているICカードマネーの機能などを除けばスマホなどは既に日本製品を圧倒的に凌駕している。これはひとえに日本人の日本製品についての奢り以外の何物でもない。童話の「ウサギとカメ」である。

かつての日本のような今の中国や韓国を笑い自らを省みることをしなければ、遠くない将来、日本は既に凋落し始めたアメリカの後を追うことになる。今の日本人は既に欧米の製品に信用を置いていない。事あるごとに「やっぱり日本製が安全安心で最高!」と言っている。だが本当にそうなのか。

日本はアメリカがかつてたどってきた同じ轍を踏もうとしているのではないだろうか。日本人は昔の日本が歩いてきた道を忘れてしまった。
この道は既に誰かが歩いて行った道かもしれない。その姿に学ぶことは今しかできないことだ。