じゃあ強者の戦い方って何ですか?

さて、前回までは弱者の戦い方についてお話してきましたが、今回は反対の立場にいる強者の戦い方についてです。なぜ強者の戦い方を知る必要があるのかって? そもそも強者はどんな戦い方をしても勝てるじゃないかって?
それはどうでしょう?

孫氏も兵法の中で言っています。「 彼を知り己を知れば百戦殆からず…」と。敵のことを知らなければ、まんまと相手の術中にハマってしまうかもしれません。相手の戦略・戦術を知っておくことは「自分がやってはいけないこと」を明らかにしてくれます。では強者の戦略とはなんでしょう?

 1.広域戦
 2.確率戦
 3.遠隔戦
 4.総合主義
 5.誘導戦

の5つの戦術が基本で「ミート戦略」と呼ばれます。強者の戦略の基本です。その基本は、強者は弱者の戦略である「差別化」を封じ込めて「弱者に弱者の戦い方をさせない」ということです。

例えば、弱者が商品の差別化を仕掛けてきたらそれをマネして、それを弱者より安く売るのです。それだっていつまでも安く売る必要はありません。弱者が潰れるまででいいのです。こういう場面では”価格競争”が威力を発揮します。ただよく見かけるのは同じくらいの規模の2つ3つが価格競争を始めて共倒れになってしまうケース。そこへ関係のなかった第三者が現れて買収していくんですね。これは日本の外食産業で多く見られました。だからこれは圧倒的な強者だけの戦略なんです。

「1.広域戦」は局地戦の逆です。
圧倒的な兵力を全体に配置して弱者の兵力を分散させてから各地で潰していきます。同じ土俵に立てば小兵力士が不利なのと同じです。かつて関脇にまでなった「舞の海」関は「技のデパート」と呼ばれるまでに自分を鍛え、技を研究してのし上がりました。真正面から全面対決すれば不利なことを分かったうえで、相手がなかなかできないことを努力で上回り、局所戦に持ち込んで勝機を見つけ出したんですね。

「2.確率戦」は強者ならではの考え方です。
「肉を切らせて骨を断つ」とでも言うのでしょうか?局所的には負ける局面があっても全体として勝てばいい、ということです。弱者は局所的にでも負けてしまえばそれでオシマイですから、まさに強者の戦い方です。

「3.遠隔戦」は読んで字のごとく遠くから味方を操って戦う方法です。
弱者の戦い方では「弱者は自分で売り切る力を持たなくてはダメ」と言いましたよね。でも強者は効率が悪いので自分がチマチマ売ることなんてしたくない、誰か味方に頼んで大量に売りさばきます。そう!強者には味方になってくれる誰かがいるからこそそんなことができるわけです。そんな誰かとは、流通・卸売り業者や代理店などです。彼らは黙っていても大々的なCMなどの効果でバンバン売れる大手の商品を好みます。自分が頑張らなくてもマージンだけはチャリンチャリンと入ってきますからね。これも弱者にはマネできないやり方です。

「4.総合主義」は2.の確率戦を裏付ける力の源泉といってもいいでしょう。
すべての方面に兵力を展開して薄くなった弱者を打ち破ります。正面攻撃です。これに正面から立ち向かう弱者に勝ち目はありません。ところが今でもほとんどの経営者がこういう戦い方をしたがるのはどういうわけでしょう?

最後の「5.誘導戦」も弱者にありがちな戦い方、いや戦いではないかな?
マーケティングの本などを読むと「フォロー戦略」として紹介されます。No.1のマネをしつつNo.1に睨まれないように商売を大きくしていくいわば”コバンザメ作戦”です。商売が成長しているときには弱者でも、先頭を行く強者のマネをしていればそれなりに大きくなれます。ところが多くのビジネスにはご存知の通り”ライフサイクル”というものがあります。成長期には強者も弱者もみんなが揃って大きくなれるパイがありますが、成熟期や衰退期に入ると固定された市場のシェアの食い合いが始まります。そうなった時にはNo.1は弱者を潰しにきます。今まで強者に追従して強者の戦い方しかしていなかった弱者に強者が牙をむくわけです。まぁ”牙をむく”といっても強者が直接に手を下さなくても自然に潰れます。なぜなら弱者が強者の戦い方をするんですから。弱者が強者のマネをして勝ったためしはありません。

ここまで読んでくると強者の戦略って普段から私たちが常識だと思っているビジネス競争の世界そのものですよね。だからこそ多くの人がその罠にかかってしまうのかもしれませんね。