血液型が大好きなニッポン人

血液型占いは子供の頃からあった。いや占いだけではなくA型だからO型だからといろいろな場面で勝手に性格診断もされてきた。今でも覚えているのは高校生のときに友達から「A型だからトイレが近いんだよ」と言われたことだ。うーん、どうなんだろう?確かにトイレは近いような気もするがそうでもないような気もする。それでもA型だからと言う理由でクラスの血液型A型の友達と毎休み時間に連れションに行っていたような気がする。雑誌を見ても女性週刊誌を見ても星座占いと血液型占いはまず載っている定番だ。かくの如く日本人は血液型になにか特別なものを感じているが、海外ではずいぶんと様子が違うらしい。

まず、自分の血液型を知らない人がほとんどなんだそうだ。自分の血液型を知らなくては不便ではないかと日本人は考えるが「知らなければいけない時は病院で調べてくれるんだから必要ない」と思っているらしいのだ。言われてみれば輸血や献血にしても医療機関や献血車で調べるわけだから自分が知らなくてもなんら問題はない。血液型を知らなくて困るのは占いと性格診断くらいのものである。

子供の頃から不思議に思っていたのは「血液型が同じ人は全部同じ運命を辿るのか」ということだった。ある日にはA型の人はすべてツキがなくB型の人はみんなが彼女や彼氏に出会い、別の日にはO型の人はすべからく体調を崩しAB型の人は全員が先生に褒められる。そんな事はありえない感じなのに雑誌を見ると堂々と断言しているのが不思議で仕方なかった。
星座占いも数は違えど似たようなものだ。”詳しい”と自負していたクラスの女子に恐る恐る訊いてみると「詳しくは星座だけではなく誕生日や生まれた時間まで関係する」のだそうだ。「なるほどバイオリズムみたいなものか」と言ったらそんなものとはぜんぜん違うのだと言って怒り出し、その後は口もきいてもらえなくなってしまった。余計なことは言うものではない。

占いではないが六曜(ろくよう)というものもある。カレンダーなどに書かれていることが多い「大安」とか「赤口」などというものだ。ブライダル関係の仕事をしていた頃はこの六曜には随分と振り回された覚えがある。結婚式は主に週末に行われることが多いのだが週末が「仏滅」に当たってしまうと結婚式の予約がほとんど入らないのだ。当然週末に仏滅が重なってしまう日が多ければその月の売上は大幅に減少する。何とかならないものかと考えた大手結婚式場の社長がいた。
六曜は古くは中国から伝わったものだと言われている。旧暦の1月1日が「先勝」で始まり基本的には「友引」「先負」「仏滅」「大安」「赤口」の順になる。仏滅はお釈迦様の入滅を表し縁起が良くないとされている。一般に先勝は午前中が吉、先負は午後からが吉などと言われているが詳しい方によればそんなに単純なものではないのだという。しかし結婚式場にとっては週末が全部「大安」になってくれれば機会損失がなくなってありがたいわけで、せめて週末を「仏滅」にするのはやめてもらいたいわけだ。この六曜には順序にもイレギュラーな事があり真偽のほどはわからないが聞いたところによれば、それを決めているのは「高島易断」という団体なのだという。
そこで件の社長は高島易断に乗り込みテーブルの上に札束を積み上げ「週末は全部大安にしてくれへんか?」と頼んだらしい。高島易断は言下に断ったらしいが社長は「せめて仏滅は外してくれ」と食い下がったのだという。結局、社長の頼みは全く聞いてもらえずこんな逸話だけが残ったというわけだ。

日本人は「他と一緒」が大好きだ。いや好きというより他人と同じだと安心する習性がある。できる限り横並びで目立たず注目されないようにする。
20年ほど前から世間では「個性を大切にしよう!」などと言い始めたが日本人の習性はそう簡単には変わらない。”今までとは違ったことをみんなでやる”ことに夢中になりいろいろなブームがやって来た。女子高生の「山姥(やまんば)ルック」などはどこがいいのかよく分からなかったが街では真っ黒くなった気味の悪い女子高生が増殖した。ルーズソックスやミニスカ制服、ポケモン、ご当地ラーメン、お寺巡り、かき氷、ガンプラ、鉄道マニアなどなど、気がつけば今までとちょっと変わったことをみんながやっている。

やっている本人がこれを個性と呼ぶならそれでもいいだろう。でもそれは結局、集団の性質であり日本人の性質でしかない。個性とはあくまで個人の性質であって多様性だ。「集団の個性」というのはおかしなものである。
日本に住んでほとんどこの島国から出ることのない民族にとって個性というものがどういう意味を持つのか、もう少しゆっくりと考えてみようと思う。