お店は楽しい!

物販店で商品の品出しをやった経験のある人は解ると思うが、品出しは単純な作業のように見えて結構頭を使う作業である。
お店に行くとたくさんの商品が綺麗に陳列されている。それは主に用途別だったり素材別だったり色別だったりに分類されていることが多い。稀にほとんど分類されず、カゴの中にドサッと放り込んであるように見えるのも実は陳列テクニックの一つだったりする。綺麗に整理された陳列は目的の商品を探し出しやすくするためだし、雑多でごちゃごちゃな陳列には”目的のものを探し出す”ゲーム性が隠れていて遊び心を刺激するわけだ。

■什器って知ってますか?
商品を綺麗に陳列をするには什器(じゅうき)を使うことが多い。什器とは店舗で商品などを陳列するために使う器具だ。コンビニやスーパーでは商品ごとにいろいろな種類の什器が使われる。おにぎりやサンドイッチの棚、袋菓子の棚、おつまみの袋を壁にかけて陳列するフック、アイスが入ったアイスケースなどなど。陳列するものの形や重さ、温度管理が必要なものなどに応じて什器を選び陳列の仕方を工夫する。

商品が売れれば棚には隙間ができるので商品を補充する必要が出てくる。補充は1日に一度程度で済むものもあれば常に棚を満タンにしておかなければならない商品もあるが、基本は常に棚が満タンになっている状態だ。ところどころ歯抜けのようになった商品棚はチープな印象を免れない。だからすぐに品出ししない場合には奥に引っ込んだ商品を最前列まで引き出して常に棚に商品が満ちているように見せなければいけない。

■どれを先に売るの?
陳列には大きな基本がある。商店で働いている人なら誰でも知っていることだが”古いものから先に売る”ということだ。生鮮品でもない限り仕入れたものをその日のうちに全部売り切ってしまうことは少ない。当然仕入れた商品は日が経つに連れて古くなっていく。新しく仕入れたものから売ってしまえば古いものはいつまでも売れず更に古くなってしまう。だから店にある在庫商品は古いものから売らなければならない。これを「先入先出法(さきいれさきだしほう)」なんて言ったりする。に倉庫にったものからに倉庫からすわけだ。

■それってそんなに売れる?
モノを売るお店には大抵の場合、一定の在庫品を置いておかなければならない。在庫がなければお客さんが欲しいと思ってもその場で渡すことができない。かといって売れない商品を山ほど在庫しても商品は古くなるばかりで埒が明かない。だから商品には適正な在庫量がある。その商品に見合った在庫を保つために販売量を見ながら問屋さんや商社などから随時商品を仕入れる。
在庫管理には実はもっと大切な問題がある。経営資源の圧迫だ。
在庫品はそれを仕入れたら倉庫を占領するばかりでお金を生み出さない。商品は売れてこそお金になる。問屋さんなどから在庫を買ってしまえば、そこで払ったお金は他のことには使えなくなる。売れない商品をたくさん持つことは自分の持っているお金をムダに固定してしまうことになる。経営では”自分が今使えるお金”のことをキャッシュフローという。無駄な在庫を増やすことはキャッシュフローを小さくしてしまうことだ。かつてバブル景気の崩壊などで潰れていった会社や商店の倉庫に不良在庫が山のように積まれていた光景はニュースなどで見たことのある人も多いだろう。だから在庫は必要最小限にしなければならないのだ。
だが在庫を減らしすぎれば売り切れの状態が頻発する。売り切れは”欲しいという人がいても売れない”ということに他ならない。せっかくの販売機会を逃してしまう。
だから在庫管理は難しい。永遠のテーマなのだ。

■在庫管理ってどうしてる?
在庫管理にはいくつかのやり方が知られている。定期発注、定量発注、なくなったら発注、在庫が基準量になるまで発注、ダブルビン方式などなど。
基本は単純だ。いつも決まった日などに在庫を確認して注文を出すのが定期発注、基準在庫量を下回ったら毎回決まった数の注文を出すのが定量発注だ。
ダブルビン方式というのは瓶を2つ用意して満たしておく。1つの瓶を使い続けて空になったら予備の瓶の蓋を開けて使い、ついでに予備の瓶を1つ注文するやり方だ。定量発注の一種であるが、我が家ではキッチンの調味料やトイレットペーパーなどの在庫管理に適用している。すると料理の途中で「あっ、味噌がない!」などという事態を防げるわけだ。特にトイレットペーパーは際立って緊急性やリスクが高いので厳重に管理している。

■商品が見つけられない!?
最近の100均では欲しい商品がなかなか見つけられないで困っている。売り場は「キッチン」「園芸」「レジャー」「文房具」などと一見キチンと整理されている。確かに文房具のコーナーに行けばなるほどノートや筆記用具、ファイルケースなどが置いてある。園芸コーナーへ行けばプラスチック製の植木鉢やプランター、肥料、種、ネットなどが並んでいる。特に問題ないように見えるのだが、いざ欲しいものが比較的マイナーなものだったりすると「はて?どこに置いてあるのかな?」と途方に暮れることが少なくないのである。

先日、汚れたお皿やフライパンなどを洗う時に最初にザッと汚れを落とすための「キッチン・スクレパー」というものを探しに行った。シリコン製の薄いヘラのようなものである。キッチンで使うものだし名前にも「キッチン」と書かれているので当然キッチンコーナーへ行ってみた。洗い物に使うのでスポンジなどが並んでいる棚を探してみるが見当たらない。形状はヘラのような形をしているのでキッチンヘラのところも探すがやっぱり見つからない。あと思いつくのは材質だ。シリコンで出来ているというのだが台所用のシリコン製品はあちこちの棚にバラバラに置かれているので片っ端から探してみる。ところがこれまた見つからないのだ。半分諦めかけたところで飛び地のようにちょっと離れた場所にもキッチンコーナーらしき棚があることに気付いた。しかしそこにはコップやら鍋敷き等がフックにぶら下がっている。「ここは違うだろうなぁ」と思いながらも念のために探してみた。するとあろうことか鍋敷きと並んでフックに下がっているキッチンスクレーパーを見つけたのだ。見つけた時はやっと宝物を見つけたようで嬉しかったがレジに並んで108円を支払った時には20分が経過していた。

■アイテムの分類と関係ない陳列ってどうよ
つまりは商品の包装された形状ごとに陳列しやすい棚に置いただけなのだ。その気持ちは分からないでもない。実はボクも物販店で品出しをした時にはそんな誘惑に襲われたことがある。
以前から継続的に売られていた商品ならその商品が並んでいる棚に補充すれば事は足りる。ところが新たに仕入れた商品には並べる棚がない。そこで同じような用途だったり分類の商品が並んでいる棚の近くに新たに置き場所を確保しなくてはならない。ところが同じような用途の商品と包装の形状が異なる場合には見た目を綺麗に陳列するのに非常に苦労するのだ。やがて面倒くさくなって似たような包装形状の商品の隣に無理やり置いてしまったりする。置かれた商品は用途も目的も周りの商品とは全く関係ないのでお客さんに発見されることはなく、結局は売れない。
今ではメーカーのコンピュータが自動で棚割りをしてくれることもあるらしいが、棚割りには自分の店のポリシーが詰まっている。赤の他人であるメーカーの、しかもコンピュータごときに任せておくわけにはいかないのだ。

■ちょっとイジワルしてみた
ボクが探すのに20分もかかった商品だが店員さんならすぐにその場所を教えてくれるはずだ。なぜなら自分がその棚に商品を並べたのだから。というわけで通りかかったアルバイト風の店員さんを呼び止めて「キッチンスクレーパーはどこにありますか?」と訊いてみた。するとあろうことか「それは何ですか?」と逆に訊き返されてしまった。これこれこういうものでシリコンで出来ているヘラのようなもので…と説明すると最初にボクが探していた棚のところに行って探し始めた。やがて探すのを諦めて「申し訳ありませんが置いてないですね」と言われた。これ以上アルバイトさんをイジメるのも気が引けたので「そうですか、すみませんでした」とだけ言って帰ってきた。

しかしこれはアルバイトだけの責任ではない。お客様の利便性を考えた店作りをしていない店長や経営者の問題でもある。店長や経営者がお客様のことを真剣に考えないから店員も考えなくなるわけだ。
とにかく棚を埋めろ、すばやく品出しをしろ、効率を上げろと叱咤するだけでは優秀なスタッフは育たない。それは店長や経営者だけでなく雇われたスタッフにとっても不幸なことだと思うのだが。