世界一美味しいラーメン

あなたはどんな料理が一番好きだろうか?
ステーキ?お寿司?パスタ?焼肉?ケーキ?天ぷら?
「どんな料理がって言われても、それぞれに違う良さがあるからどれが一番なんて決められないよ」と思う人が多いだろう。
お昼を食べようとオフィスを出る。今日は何がいいかな。「そうだ、とんかつにしよう!」。そう思ってとんかつ屋の前まで行くとあいにくの定休日。う~ん参ったな。口はすっかりとんかつになってしまっている。とんかつに決める前なら親子丼でもカレーでも良かったのに。

しばらく前にテレビ番組で「世界一美味しいラーメン」を作る、という企画をやっていた。麺やスープ、具材などの材料を日本中から厳選して集めて、麺を打ち、出汁を取り、具材を作ってラーメンを作れば世界一になる、という企画だった。最初にテーマになったのは「何味がいいか?」ということだった。塩か醤油か味噌か豚骨か、どの味が世界一にふさわしいかという話になった。そんなの好みじゃん!と思ったボクはその先のくだらない展開が読めたのでテレビのスイッチを切った。
ナンセンスである。食べ物の味は好みだ。味噌ラーメンが好きな人がいれば豚骨が好きな人がいる。ラーメンは醤油しか食べないという人もいる。つけ麺が好きな人もいれば冷やし中華が好きな人もいる。何を以って”一番”というのか。そもそもラーメンが嫌いな人だっているに違いない(いや、いないかも)。

ある日、別の番組で中華ファミリーレストラン「バーミヤン」の定番料理を中華料理の有名シェフが評価する、という番組があった。バーミヤンはその昔、よくランチを食べに通ったお店だ。値段の割に好みの料理が多かったので重宝していた。恐らく定番メニューの7割位は食べたことがある。似たような味だがやはり好みがあった。正直言ってチャーハンはあまり美味しいとは思わなかったが海鮮五目焼きそばは好きだった。餃子はあまり美味しくなかったが安くてお腹も膨れるので頼むことが多かった。ボクの評価とはその程度である。
それがだ、評価していた料理人の評価が、ボクの好みにそのままつながっていたのにはビックリした。それぞれ味についてのウンチクを語っていたが、その中身の判断は分かれるしそれぞれの好みの問題なので置いておくとして、ボクの舌は民放テレビ局的には平均的ということなんだろうか?

二十何年かぶりに新潟の南魚沼産コシヒカリがA5ランク?(それは牛肉でしたっけ?)だか何だかに”選ばれなかった”というニュースをやっていた。ボクはこのテのなんちゃらセレクションのようなアワードには100%懐疑的だ。なぜならこのテのアワードには必ず審査員がいて、その人の好みや採点のガイドラインが色濃く反映されるからだ。だから日本酒の鑑評会やワインのランク付けもまったく信用していない。
最近話題になっていた日本酒の「獺祭」も芋焼酎の「森伊蔵」も、酒好きが高じてこのテの酒のほとんどは飲んだことがある。飲むときには必ず誰かの評価も一緒だ。「今やほとんど手に入らない」とか「日本一の」とか「希少な」とか「今回だけ特別入荷」などだ。希少なものが必ずしも旨いわけではない。数が少ないからとありがたがる必要はない。高価なものが必ずしも旨いわけではなく安価なものが下品なわけでもない。好きな酒は旨いし好みじゃない酒はもう頼まない。それだけだ。

ネット広告などでもしばしば現れる旅行代理店サイトの「世界一驚くべき絶景」とか「世界一美しすぎる街並み」などのキャッチフレーズ。どうして驚くべきなのか、どこと比べた結果その景色が世界一だといい切れるのかについては一切触れない。そもそも絶景の凄さや街並みの美しさに順位なんてつけられない。すべては見て感じた人の好みに過ぎない。「~するべき」って、驚くのはボクなんだから他人に指図されたくない。素晴らしいと思うのも美しいと思うのもボクだ。ほっといてくれ。
でも日本人は指図されるのが大好きだ。特に権威(があると自分が思っているもの)から指図されたものを盲信することが大好きだ。だからテレビやネットで話題になった店には翌日から行列ができ、話題になった商品はスーパーの棚から消える。だから「世界一素晴らしい~」だの「美しすぎる~」だのと煽りたがる。すべてはフェイクだ。

そんなキャッチコピーが街にあふれている。日本人はそんなコピーを目にするとすぐに飛びついてくる。こういう業界にいるとそんな”煽り文句で客を釣る”ことが最高のテクニックのように語られる。キャッチ(コピー)がどぎついほど中身は反比例するようにショボくれている。正直なところガッカリさせられることばかりだ。だからボクはそんなコピーが嫌いだ。

「死ぬ前に最後に食べたいものは何ですか?」と訊かれたら、ボクはなんて答えるのだろう?
たぶん、ボクが世界一美味しいとも思わない、普段からいつも食べている立ち食い蕎麦かなんかを食べたいと思うのかも知れない。