藍より青く

テクノロジー

徳島県は藍の特産地だ。先日、NHKの「ブラタモリ」という番組を見て初めて知った。以前、川崎市の古民家村に行った時に藍染の染料を作っている実演工房を見学したことがあり、その作り方には独特の技法があることはうっすらと知っていた。しかしその全国でダントツの産地が徳島だということまでは知らなかった。

徳島は急峻な山が多い四国山地の北東部にある町だ。中央構造線に沿って流れる吉野川の河口近くに広がるこの辺りは古くから何度も水害に見舞われたところらしい。その証拠に徳島市内には”暴れ川”の痕跡がのたうち回った川の流れとして残っている。そんな土地では稲作を行うことが難しかったため、毎年の洪水によって作られる肥沃な土地に、台風が来る前に収穫できる蓼藍(たであい)を栽培することで発展したのだという。

蓼藍はタデという名前がついているがよく言う「蓼食う虫も好き好き」のタデとは別の植物らしい。この蓼藍には面白い性質があって、葉っぱの一部を傷つけると緑色の葉っぱの中にインジゴチンという青色の物質が作られる。元は原産地である「インドから来たもの」という意味だが、これがインディゴブルーという言葉の元になっているらしい。

藍染料を作るには蓼の葉を刻んだものを発酵させて作るのだが、このインジゴチンには防虫作用がある。つまり蓼の葉が虫に喰われると葉の中にインジゴチンを作り出してそれ以上虫に食べられるのを抑える働きがある。虫食いの被害に遭った時に自ら防衛する力を発揮するのだから自然とは大したものだと思う。

藍染は江戸時代には綿や麻などの安い庶民向けの織物を染めるために急激に広がったらしい。それまでの染料では絹織物などを染めることはできたが綿や麻をうまく染めることができなかったらしい。ところが藍染はこれらの織物も綺麗に染めることができ、庶民のファッションにも影響を与えたらしい。

明治時代になって合成インジゴの輸入が増えて日本の天然藍の生産量は激減してしまったが、藍には染料としての側面の他に古くから薬草として解毒・抗菌などの効果が知られていて現在でも研究が進められている。昨今のコロナ禍で抗ウイルスとしても効果があるかもしれないということで期待されている。

コロナ禍の中で自助が求められる世の中だが、蓼藍の葉が虫に喰われた時にインジゴ作り出して自衛するように人も頑張らなければ、自分でできることすら精一杯やらないで誰かが助けてくれるのを待っているだけでは何も解決しないような気がする。逆に言えば、自分でなんとかしようと頑張ろうとするからこそ助けてくれる人が出てくるのかもしれない。

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