もう何年も前から気象庁は緊急地震速報というものを出している。地震動にはP波(Primary Wave)とS(Secondary Wave)波という伝播速度の違う2種類の波があるという。大きな地震の時に最初に来る突き上げるようなカタカタと揺れるのがP波で、その後ユサユサとした横揺れがS波だ。震源からは同時に発出された揺れも伝わる速度が異なるので、数多くに地震計などの観測機のデータを分析するとどこでどれくらいの地震が起きたのかを推測することができる。
震源で地震が起きてから揺れが伝わってくるまで時間がかかるといってもそれはほんの数秒だ。その間に全国各地や海底に設置された観測機からのデータを集めて瞬時に解析し、全国に通知することは至難の技だ。だから外れることも多い。先日、関東地方では房総半島沖で大きな地震が起きたと緊急地震速報が流れたが、実際には東京から600Km近く離れた太平洋の鳥島近海で起きた地震だったことがわかった。
しかし外れたからといって大きな被害が出るわけではない。外れれば地震は来ない。来なかった地震で被害を出すのは慌て者である。地震が起きると思って家の外に逃げようとして転んで骨を折る。普通の人は慌てて駆け出したりしないでテーブルの下に隠れたりして来るかもしれない大地震に備える。
「注意1秒」だ。「ケガ一生」にならないために、ほんの数分の間、今すぐにやってくるかもしれない地震に備えて緊張して備えていることがどれほどの負担になるだろう。その結果、実際に地震が来れば備えたことが役に立つわけだし、来なければ「よかったね」と笑いあえるというわけだ。
ほとんどの日本人は緊急地震速報が外れたからといって腹をたてることはない。しかしごく一部の”原理主義者”はその責任を追及しようとする。自分は何も被害を受けなかったにも関わらず。
なんの前触れもなくいきなり大地震に見舞われるより、数秒でも先に心構えができていた方が被害は少なくなる。揺れなければそれまでのことだ。どちらがいいかは火を見るより明らかだ。だから地震被害に慣れた日本人は1秒でも前に届く地震の情報をありがたいと思う。
もちろん月に何度も間違った速報を出していたら”オオカミ少年”になって誰も耳を貸そうとしなくなるだろう。でも今の技術はそこまで不正確ではない。だからたまの”外れ”には目をつぶっていられる。
しかしだからと言って地震の前には必ず速報が流れるのかといえばそうとも限らない。いきなりやって来ることもある。テクノロジーに頼り切って油断しきっていては助かる命も助からないことだってある。天変地異に油断は禁物だ。それがわかった上で生活していくことが大切なのだ。
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