結婚してくれ!

コミニュケーション

テニスの四大大会をご存じだろうか。全豪オープン、全仏オープン、全英(ウインブルドン)、全米オープンの4つだ。グランドスラム大会とも呼ばれ、すべての大会を制した選手をグランドスラマーと言ったりする。一つ一つの大会で優勝することももちろんだがこれを1年間の間に成し遂げられた選手はほんの数えるほどである。最近はジョコビッチ(セルビア)やナダル(スペイン)、フェデラー(スイス)、ウイリアムス姉妹(アメリカ)、大阪なおみ(日本)などがトップ選手として活躍しているが、足掛け2年にわたるグランドスラムの4連続優勝はあるものの年間グランドスラムはまだ達成していない。

過去にもクリス・エバート、ナブラチロワ(アメリカ)、ヒンギス(スイス)、サバティーニ(アルゼンチン)、モニカ・セレス(ユーゴ)、シャラポワ(ロシア)、コナーズ、マッケンロー、アガシ(アメリカ)、ボルグ(スウェーデン)、ベッカー(ドイツ)などの錚々たる選手が多くいたが、その中でも異彩を放っていたのがドイツのシュテフィ・グラフであることに異論をはさむ人は少ないだろう。かつて1988年のウインブルドン大会ではナブラチロワを破って同じくドイツのボリス・ベッカーとアベック優勝を飾っている。この時、わずか18歳だ。

その後のグランドスラム大会をすべて制したうえに同年行われたソウルオリンピックでも優勝し”ゴールデンスラム達成”と騒がれた。そして現在に至るまで男女を通してゴールデンスラムを達成したのはグラフただ一人である。その後も3年以上にわたって世界ランキングトップに君臨し続けた。世界ランキング1位にいた期間は通算で7年にもわたる。

そんなグラフは1996年のウインブルドン大会の準決勝で日本の伊達公子選手と対戦する。息詰まる試合のなかサーブを打とうと静まり返ったコートに突然、

「Steffi, Will you marry me ?(シュテフィ、俺と結婚してくれ!)」

という声が響き渡る。グランドスラム大会のしかも格式の高いウインブルドンの準決勝である。普通では考えられない状況だ。しかしそのときグラフは苦笑いしながらすぐにこう切り返した。

「How much money do you have ?(あなた、いくら持ってるの?)」

このウィットのきいた対応に場内の観客は笑い声を上げた。なんともストレートな言い草でユーモアたっぷりだ。ぶっつけ本番というより一種のトラブルといってもいい。ただ黙ってしまえば会場はドッチラケだっただろう。日本人にももっとこんなセンスが欲しいものである。もっともこのとき伊達選手は「How about me?(私じゃダメ?)」と答えようかと思ったと後日語っていたから、アスリートも超一流になると頭のキレも素晴らしいらしい。

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