甘みと甘さ

コミニュケーション

テレビのバラエティ番組などを見ていると山奥の清流の水を飲んで「甘〜い」と言うタレントがいる。何がどう甘いのかはよくわからないがカメラに向かって満足そうな笑顔を見せている。

畑で掘りたての根菜をかじって「甘まーいっ!」と叫ぶお笑い芸人がいる。人参やサツマイモなどは蒸して温野菜にするとびっくりするくらい甘くなることはある。だからといって果物ならいざ知らず取れたての蕪(かぶ)を生でかじってもそんなに甘いとは思えない。おそらくお決まりのポーズをとっているだけだ。

いくら番組のディレクターに頼まれたからといってそんなことを演じる人をボクは信用できない。最近ではテレビに出てくるタレントや芸人は、新鮮なものを食べた時には決まって「甘い!」「とろけるぅ〜」「やさしぃ〜味ぃ〜」と言うことになっている。それは番組の音響担当者が芸人のつまらないコントにも笑い声の効果音を被せるのに似ている。予定調和だ。笑っている人など一人もいないのにである。

旅や体験には多くの人が意外性を求めているのにどうして食べ物の味にだけは予定調和を求めるというのだろう。そもそも美味しいということと”甘い”ということは別物だ。全てものは甘いから美味しいのではない。美味しいから美味しいだけだ。そこには香りや歯応え、温度、舌触りなどいくつもの感覚が関係している。そもそも砂糖そのものを舐めて「美味しい!」と喜ぶのはイタリア人やベルギー人は知らないが日本では幼い子供だけだ。

砂糖の甘さと何かを食べて美味しいと感じる時の甘味は別物である。それを一緒くたにするような大雑把な人間を演じることに、いくら生活のためとはいえタレントや芸人たちは抵抗を感じないのだろうか。本人たちに聞いてみたいところだが残念なことにボクには芸能人の知り合いがいないのでそういうわけにもいかない。

先日テレビ番組の中で、九州のある地方で魚の練り物を作る時に大量の砂糖を入れていた。出来上がったものをスタジオに持ち帰って試食する場面でそれを食べたタレントが案の定「甘ーい」と嬉しそうに言っていた。そりゃそうだろう、砂糖を入れたのだから。でも本人的には「美味しい!」という代わりに「甘ーい!」と口に出したのだろう。こうなるともはや何が言いたいのかさっぱりわからない。

こんな番組ばかり作っているからテレビは見捨てられていくのだ。そのことに気づいていないのはおそらくテレビ局や制作会社で働くテレビマン達だけなのだろう。まぁ誰も困らないのだから害はないのだが…。

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