昭和レトロ

テクノロジー

最近は「昭和レトロ」というものが若者の間で人気なのだそうです。年寄りの懐古趣味ならわからないでもありませんが、今どきの若者がレコードやカセットテープで音楽を聴いて、「温かみのある音だねぇ」などと言っているのを聞くと、頭がおかしくなちゃったのではないかと心配になってしまいます。だって昭和の頃にはレコードの埃を掃除したりラジカセのヘッドをアルコールで拭いたりして、いかに雑音を減らすかに腐心したのですから。ダイナミックレンジ(音域)だって今のCDやダウンロード音源とは比べものになりませんでした。いや今だってそれは変わらないでしょう。

オーディオマニアの間では、テープデッキの回転数のふらつきの指標だったワウ・フラッターやS/N比(シグナルとノイズの比)、ダイナミックレンジの値などが盛んに議論されたり、高級機種では比較的目立つ高域のノイズを低減させるドルビーシステムが搭載されたりしたものです。それがある時、CDが販売されるようになって時代は一気にデジタルにシフトしました。ビデオもVHSだベータだと国論を二分したものですが、それがレーザーディスクやVHDに取って代わられたかと思うとすぐにDVDやブルーレイの時代になりました。

しかしそんな時代も大して長続きすることはなく、今ではご存じのように音楽や映像はネット上で配信され、ダウンロードする必要すらなくなっています。画質や音質はビデオやレコード、カセットテープの頃とは雲泥の差で、今さら昔のレコードを持ち出すこともありません。そもそもプレーヤーやラジカセなどもはや家には残っていません。一世を風靡したウォークマンはスマホの中で何万倍も素晴らしい音を響かせています。なのになぜ今ごろになって「昭和レトロ」なのでしょうか?テレビだってオーディオだって白物家電だって、昭和の頃に使っていたものより圧倒的に高性能なものが安く手に入る時代になったというのに…。

音楽を聴くのに雑音は邪魔なだけです。ない方がいいに決まってます。シャーシャーいう雑音に風情なんてありません。だから今の若い人たちのいう”アナログに風情を感じる”いわゆる「エモい」という感覚が理解できないのです。だってタダの「低品質」「低性能」だったのですから。今の20代〜30代の人たちはあの頃にはまだ生まれておらず、あの頃の不便さも知らないのでしょう。免許を取って彼女とドライブに行くときも、涼しい高原ならエアコンがなくてもあまり嫌な顔もされなかったし、お金がなくてカーステ(カーステレオ)が買えなくてもダブルラジカセU4(サンヨー)を後部座席に置いて、ラジカセの電池が切れそうになったらコンビニで缶コーヒーを買うフリをしてこっそり乾電池を買ったりしたものです。(ダブルラジカセはA面とB面の連続再生(オートリバース機能)で長時間の再生ができたのです)

そんな時代のどこに風情があるのかさっぱりわからないのは、やっぱり自分が年老いて時代遅れになってしまったからなのでしょうか?

でも今にボクたちが「大正ロマン」をかっこいいと思うように、ボクが死んだ後には「令和レトロ」を懐かしむ未来の若者たちもきっと出てくるのでしょう。今の時代が「令和レトロ」になる頃には、さしずめスマホやゲーム、アニメ、ユーチューブ、TikTok、タッチ決済がエモくなるんでしょうか? 今は「〇〇決済って使いにくいよね」なんて愚痴っていても、その頃には「あの頃ってスマホを読み取り器にタッチすると”シャリーン”って音がしたよね。ヤバくね?」なんて言ってるかもしれません。いやヤバくね?はとっくに廃れてるか?(笑)

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