「お客様のニーズを考えろ」だの「お客様の立場に立て」とは営業現場でよく言われてきたことだが実は一番大切な視点が抜けている。営業マンはお客様とは違うのだ。自分は”売る”立場でありお客様は”買う”立場だ。お客様はお金を払い、自分はお金をもらう。同じ立場になど立てるわけがない。
自分がその立場にいなければお客様の視点から眺めることはできない。つまり自分が”お客になってお金を払う立場になった時”に初めてお客様の視点から見られるようになるのだ。例えば絵画の価値を見極めようとする時、芸術作品の価値は人それぞれに感じるものが違うので一概には言えないが自分なりの好みや価値観で評価することはできる。
「私は絵画のことはとんと解らなくて…」という人でも好き嫌いを言うことはできるだろう。例えば自分がその絵を買うとしたらいくらまで出すかを考えることはできる。実際に買うかどうかは別として、3億円出しても買いたいと思うのか100円出したくないと思うのかは人それぞれだが判断することはできる。そこでは一般的な市場での取引価格を考慮してはいけない。それは芸術への冒涜だ。
いくらなら買ってもいいと思うか。その絵をどの部屋のどこの壁に飾ろうと思うか。そこまで現実的に妄想してみるのだ。それが自分にとってのその絵の価値だということになる。つまり自分が本気で買う気にならないとお客の立場には立てないということなのだ。
しかしそもそもその絵を欲しいと思うかということは別の問題としてある。もし自分が欲しいと思わないのならその絵に魅力を感じていないということだ。自分が魅力を感じていないとしたらそんなものをお客に売ることはできない。自分が魅力を感じないものをあれこれ褒めそやしても誰も魅力的だとは思わないし買おうとも思わない。当たり前のことだ。だから自分が販売員の立場なら自分も魅力を感じるようにしなければならない。
では欲しいと思うのはどんな人なのか。サーフィンをしない人はきっとサーフボードが欲しいと思わないだろう。でもサーフィンというものに別の魅力を感じている人(サーフィンをやってると言ったらが女の子にモテるだろうなと思っている人など)はサーフィンをしなくてもボードが欲しいと思うかもしれない。実際の昭和バブル期にはフォルクスワーゲン・ビートルの屋根にサーフボードに穴を開けてネジで取り付けている人もいたのだ。
自分がサーフィンに魅力を感じないのならそんな人になりきって考えてみればいい。自分と同じ価値観を共有できる人の話は誰でも興味深く聞きたがるものなのだ。
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