ボクが20代の頃、女の子バンドの先駆けとして脚光を浴びたグループがあった。プリプリことプリンセスプリンセスである。当時はカセットテープに録音してカーステで聴いたりしていた。その頃にホテルに転職してブライダルの仕事をしていたので披露宴のBGMでもよくリクエストされていた。
当時の結婚式の音楽といえばドリカムや映画「ボディーガード」、「美女と野獣」などが多かったがその一角をプリプリが占めていたのだから人気のほどがうかがえる。
ところが最近になってプリプリの話題に触れたのは
「プリプリのダイヤモンドの歌詞で、
♪針が降りる瞬間の胸の鼓動を焼きつけろ…♪
でいう針ってなんのことですか?心に刺さる針ってことですか?」
というネット掲示板への質問を目にした時だった。
はぁ?レコード針に決まってんじゃん!と思ったあなたは間違いなく昭和人だ。
たぶん「ダイアモンド」がヒットする10年近く前にはCDが発明されて5年前には一般に普及し始めている。もっともその頃には大量の秘蔵レコードがあるのにこれからCDを買い直す気にはなれないというレコードファンも多く一気にブレイクする状況ではなかった。
それにレコード時代に青春を送ってきた若者はレコードにそれなりの愛着を持ってきた。30センチ四方のジャケットにはパンフレットのようなライナーノーツが付いていたりアーティストの大きな写真やポスターが入っていた。「あんなちっこいCDなんかどうせダメに決まってる」という者もいた。
あの時代は世の中のいろいろなものが変わっていった時代だ。レコードがCDになったり家電がケータイになったりした。「ダイヤモンド」中でも歌われている。
♪初めて電話する時にはいつも震える… ♪
♪ブラウンじゃわからない景色が見たい… ♪
ボクらが学生の頃は女の子の家に初めて電話するには覚悟と決心が必要だった。当時、電話は一家に1台しかないのが普通だったから電話をかければ誰が出るかわからない。妹とかお母さんが出てくれればまだいいがもしかしたらお父さんが怖い声で出るかもしれない。ことによったら「誰だお前は!」と怒鳴られて斬られる、いや切られるかもしれない。
そうこうしているうちにレコード針も家電もブラウン管もなくなった。今の子供達は和式便器の使い方がわからないと言われるがボクらの頃には逆に洋式便器の使い方がわからない子もいた。比較的新しい家でなければ和式が当たり前だった。だから家の和式便器の上に被せて簡単に洋式にするアタッチメントも売られていた。
今ではダイヤル式の電話機もひねる蛇口もわからない子がいるという。いやわからなくてもいいのだ。そんなものはもうなくなってしまったのだから。だからといって生活が味気なくなったとはちっとも思わない。そもそも昔の暮らしにさほど味があったとは思っていないのだから。
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