ニッポン人はアイコンが大好き

コミニュケーション

ジブリ映画をテレビで放映する季節が来た。最近の民放では「映画の特定場面でキーワードをSNSでみんなで呟こう!」などという呼びかけがあったりしてそれなりに盛り上がっているのだという。それのどこが楽しいのかボクにはわからないが若者たちには”繋がり”とか”絆(きずな)”とかが感じられて”勇気をもらえる”らしい。

”絆”が流行り始めたのは東日本大震災の後だろうか。人と人との助け合いや支えあう気持ちが生きていく、立ち直っていくための大きな力になった。あれから8年以上が過ぎた今でも絆や繋がりの大切さは衰えることなく、いや更に力強く人々の間で叫ばれている。
人は独りぼっちでは生きていかれない。うさぎも寂しいと死んでしまうのだとのりピーは歌っていた。きっと絆だけでは生きていかれないのだろうとは思うが、辛い思いをしている人が生きていくためのアイコン(象徴)として心の中で強く感じていられるのならそれは大きな力になるのだろう。

日本人にとって、いや人間にとってアイコンはかなり重要なものなのだろうと思う。西洋人やアラブ人などにとっての宗教の”神”も一つの象徴なのだろうし、ジャングルに住む少数民族にとっては長老や崇拝すべき象徴の石だったりするのだろう。コミュニティの中の多く(マジョリティ)が同じ方向を向いていくための目印なのだと思う。それによってコミュニティ内の連帯を確認できたり争いごとを収めるための権威になったりする。

スタジオジブリのアニメ映画やスポーツの試合などでもニッポン人は象徴的な場面だけを取り上げたがる。アニメでは”破滅の呪文”だし女子サッカーではW杯優勝の授賞式だ。ベートーベンの交響曲でも交響曲5番の冒頭の最も有名なフレーズはほとんどの人が知っているしドボルザークも「新世界から」だけは多くの人に知られている。寅さんこと映画「男はつらいよ」のテーマ音楽が流れれば渥美清さんの笑顔が頭に浮かぶし、さだまさしさんの声で♪あ~あ~あああああ~あ~♪というメロディが流れれば北海道を彷彿とし、♪ババンババンバンバン♪ならドリフではなく温泉が思い浮かぶ。

それもこれもアイコンの力である。日本人はアイコンのない長ったらしい退屈なものを好まない。ドラマでも映画でもすべてのストーリーを事細かに聞かされるよりもアイコン一発のほうがリアルにイメージできる。パッとわかることが大切だ。そうなると最早アイコン以外の他のものはどうでもよくなってしまう。往年のヒット曲もほとんどの人はサビの部分しか覚えていない。いやそれでいいのだ。誰も全部を覚えることなどできやしない。

でも時にはアイコンの奥にある細やかな描写や心の動き、歴史背景などを知ることでさらに深い感動を得ることができるのなら、たまには一歩だけ深入りしてアイコン以上のことを知ることも楽しいと思うのだけど、どうかな?

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