ギネスとミシュラン

マーケティング

ギネスブックはみなさんご存知だろう。「何でもいいから世界一」の記録を集めた本である。そこに載っている記録は「ギネス記録」とも言われてそれなりの権威をもって語られる。では「ミシュラン」と聞いて何を思い浮かべるだろう。多くの日本人は美味い料理を出す店を載せた”レストランのガイドブック”ではないだろうか。

ご存知のようにギネスはアイルランドのビール会社であり、日本でもギネスビールは有名だ。以前はバーやレストランに行かなければ飲めなかったが、最近ではスーパーでもギネスの缶ビールを売っている。ボクはもともとビール自体があまり好きではないのでギネスもあまり飲まないが、そもそもビール会社がどうして”世界一を集めた本”を作ろうと思ったのだろうか。

ウィキペディアを見ると、昔、当時の社長が仲間と狩りに出かけた時に「何の獲物が一番速く飛べるか?」という議論になったのだという。たぶんどの獲物を仕留めるのが一番難しいかという自慢合戦になったのではないだろうか。そこから「何でも世界一を集めた本を出したら売れるんじゃない?」ということになったとかならなかったとか。つまり本業のビールとは何の関係もない。

一方で、ミシュランはフランスのタイヤメーカーである。最近では少なくなったが以前は日本でもガソリンスタンドでタイヤを売っていた。タイヤショップなどなかった。だからタイヤメーカーのセールスマンはガソリンスタンドにタイヤを売りに行った。ただ黙っておいてあるだけではタイヤは売れない。ネームバリューも大切だ。そこでミシュラン社はスタンドの顧客であるドライバーに向けて周辺の観光ガイドブックを作って配り始めた。

ネットのグルメサイトもなかった時代、ドライブ中にお腹をすかせた旅行者はスタンドに立ち寄ったついでに従業員に近くの美味しい料理を食べさせるレストランを訪ねたに違いない。そこでガソリンスタンドに自社で作ったガイドブックを置いてもらってお客に配ったのだろう。もちろんそこにはミシュランタイヤの宣伝を載せて。だからこちらは本業の延長で生まれたものだといえる。

本業を伸ばすために作ったガイドブックなら、今あるビジネスを深掘りして考えることで思いつけるアイデアだが、本業と関係のないものを作り出すには天から降ってくるアイデアと幸運がなければならない。しかしそれはただの偶然などではなく、常に「何か面白いものはないだろうか」と貪欲に考え続けていたからこそ浮かんだアイデアだともいえる。ボーッと生きていては何も残らない。

ちなみにミシュランは世界で初めてラジアルタイヤを開発して売り出したメーカーでもある。一時はF1レースにもタイヤを供給していたが日本ではブリジストンやダンロップ、ヨコハマ、トーヨーなどのライバルに押されて安売りタイヤメーカーの烙印を押されており捗々しくないが、世界的に見ればブリジストン(日本)に次ぐ第2位のタイヤメーカーだ。

世界では色々な会社が一見すると本業とは別のところで目立っていることがあるが、その歴史を辿ってみると意外なところに意外なアイデアが見つかったりするので面白い。

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