オートクチュールとプレタポルテ

ファッション

ピエール・カルダンというファッションデザイナーが昨年末に他界した。ファッションセンスもなく興味もないボクがこんな話をするとは思っていなかったが、この人は既製服ファッションの先駆けになったデザイナーらしい。

ご存知のようにドレスにはオートクチュールとプレタポルテがある。いわゆるオーダーメイドと既製服だ。男性のスーツなどではセミオーダーというのもあってホテルに勤めていて百貨店の外商と付き合いがあった頃にはお互いの営業協力だと言いながら割引してもらって作ったこともあった。

「何百万ドルも払って服を買える女性ばかりではない」とカルダン氏は言ったという。ファッションは貴族やセレブだけのものではないと言ってファッション界にプレタポルテの道筋をつけた。それが今の大衆向けのファッションを作ることに大きく貢献したのだという。

それは一つのファンションの革命と言ってもいいと思う。一般市民にとってはるか遠くの王宮や社交界のものだったファッションを身近なものに引き寄せてくれた。「誰もがオシャレを楽しめる世の中にしたい」と言って誰もが手の届くところにファッションを引き下げた。

もっとも自分のファッションに興味のないにボクのような人間にとってはどうでもいいのだが、それでも周りの人たちがカッコよくオシャレになっていくのはそれだけで豊かな気持ちにしてくれる。

言ってみればマイノリティだけの世界にあったファッションを身近に感じられるものにしたことは大きな功績だと思う。「マジョリティが何を求めているのか」を下から目線で捉えて安価に貴族たちだけのものだった文化を庶民のものにして見せた。これは一つの革命だったのかもしれない。

しかしマジョリティが求めているものだけを追いかけても革命は起こせない。なぜなら大衆には革命的なものがないのだから。庶民を貴族にするという当時ではあり得ない発想こそが革命を起こしたのだと思う。

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